2月の河津桜、3月の東京のソメイヨシノ、4月の津軽のソメイヨシノの満開の桜の木の下で、世にも不思議な入れ替わりの儀式が行われる。最後まで行方が読めない入れ替わりサスペンス小説。
主人公の男性は超自然的な力により一瞬にして20歳の女性に憑依する。へきれき(雷)が落ちた瞬間に転移が起きるので、まさに青天の霹靂本来の意味の通りだ。落雷と同時に男女がゴッツンコと衝突した瞬間に人格が入れ替わるという、あまりにも月並みで、クラシカルな性別転換が小説の冒頭で起きてしまう。男性は落雷で即死するので、主人公は女性として残りの人生を幸せに生きていけばよいわけだが……。この男女の転換が単なる偶然により起きたのではないことは、主人公と一緒に物語を体験しながら解き明かし一気に読み進んでいただきたい。
危険な誘惑は28歳のOLの目を通して、女性にとっての快感とは何かという質問に対する答えを究極まで問い続ける、新しい形のシリアス・エンターテインメント作品。秋葉原を舞台として軽快なタッチで始まるストーリーを楽しく読み始めると、あっという間にファンタジー・シミュレーターが展開する世界に引きずり込まれてしまう。あなたは、どんな現実よりも現実的なその世界に足を踏み入れると、身動きできなくなってしまうかもしれない。
24歳のサラリーマン凜太郎は、自分の奥底にある願望が予想しがたい形で実現されるファンタジー・シミュレーターというシステムに出会い、恋人の優樹菜を巻き込んで、別世界へと旅立つ。その世界で、凜太郎は凛子という女性になるだけではなく、予想もしなかった怖ろしい状況に置かれる。極限の設定の中で凛子が経験することは、読者の心の奥底に長年消えないほどのショックを残すかもしれない。(前述の原作は女性が主人公で、MTF版は男性が主人公ですが、別世界で起きることは同じです。)
ポルトガル人を父に持つ気難しい老人のマリオ・ロドリゲスは、謎の少年が煎じた秘薬を飲み、若くて美しい女性として目覚める。
ネコの視点とネコの感性でジェンダー、友愛、恋愛、家族愛、性的衝動を含むネコの人生の真実を描く。高校生の主人公はマタタビを食べると身体がネコになり、ネコの視点で第一人称で語る。いわゆるセックスシーンは無いが非常に官能的な小説。
向坂大吾は32歳のIT会社社長。末期癌におかされて余命3ヶ月を宣告され、それをフェイスブック、ツイッター、公式ホームページなどで公開し、癌克服の方法について公募する。その結果、2つの新規技術に救いを求めることになった。一つは治験段階以前の強力な新薬候補物質(天然物の誘導体)で、もう一つは向坂大吾の細胞からクローン人間を作って脳の中の情報を転写するというとてつもない方法だった。新薬候補物質は濃度を上げた段階でアナフィラキシーショックを起こし向坂大吾は意識を失う。冷たいベッドの上で目を覚ますと、何となく身体に違和感を感じたが、クローンの実験が成功したことを悟った。
静岡県のサッカー少年でチームのエースだった杉村美瑠久は準決勝の前半に得点を上げるが、その直後にアタックした際に出血して中途退場する。病院での診断は美瑠久の人生に根本的な変化をもたらす。その1年後、中東での紛争で使用された「ある兵器」が予期せぬ変化を遂げ、数週間のうちに地球の人口の約半分に「外観では分からない小さな変化」をもたらす。その変化は数ヶ月の間に世界を静かに、自然に、そして不可逆的に変革するのだった。美瑠久のTS体験と、悲しく感動的な美瑠久の恋が見所。