危険な誘惑MTF版(TS小説の表紙画像)

危険な誘惑MTF版
ファンタジー・シミュレーター

【内容紹介】危険な誘惑のMTF版。原作は24歳の女性の視点で女性としての快感を追求した小説だが、本書は主人公を男性に置き換えたMTF版のTS小説。凜太郎は恋人の優樹菜と一緒に奇妙な世界に送り込まれ、極限的な状況の中で怖ろしい状況に置かれる。原作とは主人公性別が異なるため相手役の優樹菜との関係が根本的に異なる点が見どころ。

まえがき

 あなたはどんなファンタジーをお持ちですか? 

 私はちょっとした偶然によって自分のファンタジーを実現してくれるマシンに出会いました。そのファンタジー・シミュレーターという名前のマシンは私の心の中にある願望や妄想を読み取り、その通りの世界に私を連れて行ってくれるのです。

 でも、私のファンタジーとは具体的にどのようなものなのか、実際にそれが実現されるまでは自分自身が明確に認識できていませんでした。

 自分が望む夢の世界とはどんなものかを箇条書きにして提出し、書いた通りに実現してくれれば話は簡単なのですが、そのマシンは私の脳を潜在意識の領域まで隈なくスキャンし、願望、欲望、欲求、妄想などの全ての情報を読み取った上で、私にとって本物のファンタジーを押しつけがましいほどの鮮明さで見せてくれたのです。

第一章 ファンタジー・シミュレーターとの遭遇

 優樹菜とは四時に会う約束だった。連休明けの土曜日の午後、僕は早めの電車で秋葉原に来て電気街をブラブラしていた。

「この辺りのはずなんだけどなあ」

 中央大通りから一筋西に入った通りを、左右の雑居ビルの看板を見上げて、ギャラクシー・コスモスという名前の店を探しながら歩いた。その店はツクモ電機の手前の角を秋月電子の方に左折したビルの四階にあるはずだった。グーグルマップを表示させたスマートフォンを左手に持って四階の看板を探す。

 丁度その角を左折した時、秋月電子の方から走って来た大柄な女の子と衝突して、僕は跳ね飛ばされ胸からドサッと路上に倒れた。その女の子もスマートフォンを見ながら走っていて、お互いによそ見をしながらの正面衝突だった。

 倒れる際にとっさに右手で体重を支えたので、右掌と膝がヒリヒリしていた。倒れたままの姿勢で、衝突した相手の女性に目をやると、彼女はその場にしゃがみ込んで痛そうに胸を押さえていた。フリルだらけのメイド服を着て膝まである白いソックスを履いている。

「大丈夫ですか?」
 僕は自分が落としたスマートフォンを拾い上げてから女性に近づいた。彼女の足元に彼女のスマートフォンが落ちていたのを拾って彼女に手渡した。

「ちゃんと前を向いて歩くダメね、オッサン」

「オ、オッサン?」
 よそ見しながら走って来て衝突した相手に、変なカタコトの日本語で、知性のかけらもなさそうな化粧をしたメイド服の太目の女にオッサンと呼ばれる筋合いは無い。

「そっちこそスマホを見ながら走ってくるからぶつかったんだろう」
 僕の頭の中からは、自分がスマートフォンの地図を片手に上を向きながら角を曲がったことに関する反省の念は完全にすっ飛んでいた。

「ウッセー、このじじい」
 メイド服の女は丁度駆けつけてきたもう一人のメイド服の女性と外国の言葉でしゃべりながら末広町の方向へと去っていった。言葉の意味は分からないが、僕の悪口を言っていることだけは間違いない。

 それまで、秋葉原で見かけるメイド服の女性に対して悪い感情を抱いたことは一度もなかった。チラシを渡されて煩わしいと感じることはあるが、結構可愛い子もいるし、カタコトの日本語しかしゃべれない子の中にはスタイル抜群の美人も多いので、どちらかというと「秋葉原の風物詩」として歓迎していた。

 しかし、衝突した相手にオッサンとかじじいなどとの悪態をつく女など、例え美人でも言語道断だ。しかも太目のブスだった。二十四歳の僕をオッサン、じじい呼ばわりするのは日本語が分かっていない証拠だ。思い出すだけで腹が立つ。

 一瞬の人だかりが解消されて、僕は道行く人々の流れの中に挿された一本の邪魔な杭のように立ったまま、角を曲がって左上に見えるはずの看板を探していた。

「お怪我はありませんでしたか?」

 その時、僕に近寄って来て優しい声をかけたのは深いロイヤルブルーのドレスに身を包んだ長身の美女だった。僕より少し年上だろうか。シルクロードの彼方から来たようなエキゾチックで哀愁の漂う顔に澄み切った美しい目をしていた。場違いなロイヤルブルーのドレス姿が何の不自然も無く秋葉原の裏通りに溶け込んでいた。

「ええ、大丈夫です、全然」
 僕は彼女を見て、とっておきの微笑を返した。

「これは、至高の安らぎを提供するファシリティーに関するご案内です。本日限定の無料サービス券になっていますからお試しになればよろしいですよ。たった五分しかかかりませんから」

 その女性のドレスと同じ深いロイヤルブルーの薄いプラスティックのカードには「ファンタジー・シミュレーター」と書かれていて、店の場所を示す地図が描かれていた。美しい外人女性に出会って理性を混濁させられた僕でも、秋葉原の路上でもらった無料サービス券を信頼したわけではないが、彼女の放つ不思議なオーラが僕を無防備にした。

「ファンタジー・シミュレーターとは面白そうな名前ですね。五分で至高の安らぎが得られるんですか? じゃあ、トライしてみようかな」

 僕はそのプラスティックのカードを受け取り、出来るだけフレンドリーな口調で言った。

「そこのS通商の隣のビルの五階にあります。四階はギャラクシー・コスモスです」
 僕は軽い会釈をして、自分の後姿への彼女の視線を感じながら、彼女が指し示したビルの階段に向かって歩いた。数秒後、階段の登り口で微笑みを送ろうと振り返ったが、彼女の姿は跡形もなく消え去っていた。

 それは不思議な出会いだった。僕がギャラクシー・コスモスに行こうとしていたことは誰も知らないはずなのに、彼女は僕の頭の中を透視していたかのように道案内をしたのだった。でも僕は全く胡散臭さを感じず嬉々として狭い階段を上っていく。

 四階の階段の狭い踊り場の右側にあるドアは開放されていて、フロアー全体がギャラクシー・コスモスの店舗になっていた。三方の壁面とその間の棚にはゲームやDVDや書籍が所狭しと並んでいて、若いオタクっぽい客たちが慣れた感じで各々の探し物をしていた。

 僕が買いたかったのは「危険な誘惑」というボブゲの攻略本だった。ボブゲという略語は現代略語に精通している女子高生の間でも意外に認識率が低かったりするが、ボーイズラブゲームを意味している。何故ボラゲでなくボブゲというのかは僕にもわからない。「危険な誘惑」の攻略本はヤフオクなどで探したが見つからなかったので秋葉原の専門店に探しに来たのだ。

 僕がはまっている「危険な誘惑」は、やや小柄で美しい男子高校生が主人公のボブゲだ。主人公の大金持ちの祖父が全寮制の女子校の理事長をしていて、主人公は女子のフリをしてその女子校に転校する。その女子校では、生徒同士の恋愛が盛んに行われている。主人公には特殊能力があり、五秒以上のディープキスをすると相手と性器が入れ替わる。つまり、狙いの同級生の女子を誘惑して五秒以上ディープキスをすると、その同級生の股間に自分のペニスが生え、彼女の性器が自分の股間に転移するのだ。うろたえる相手を誘惑して射精させるとポイントが増え、自分がオーガズムに達してもポイントが増える。ポイントが増えるとパワーアップできて、誘惑能力がどんどん高まる。相手の射精と自分のオーガズムが同時に起きるとポイントが四倍になる。もう一度五秒以上のディープキスをしない限り性器は元に戻らないので、キスを四秒で止めたりして相手をじらせながら毎日誘惑するのがポイントを上げるコツだ。但し、妊娠するとゲームオーバーになり、クレジットカードでゲームの会社からポイントを買わない限り再開できなくなる。ポイントがゼロだと同級生を誘惑する力もゼロになるからだ。

 キスに誘い込むテクニック、相手の射精と自分のオーガズムを同期させる方法や避妊テクニックの難易度が結構高く、なかなか思い通りにならなかったり、すぐに妊娠してしまうという奥の深いボブゲだ。高校時代に好きだった女子や、会社で気になっている女性を相手に見立てて毎晩のようにプレイするが、彼女が自分の股間に生えたペニスに気付いてうろたえるシーンや射精するシーンを見るとドキドキするし、自分がオーガズムに達するシーンでは、本当にオーガズムに達したかのような錯覚に陥るのが不思議だった。

 勿論、そんなゲームをしていることは誰にも話してはいない。男性が女子高生の制服を着て女子校に入るということ自体が相当やばい設定だし、相手の女性と性器を入れ替えるという倒錯ゲームをしていることがバレると、変態と思われるのが確実だからだ。

「あのう、すみません。危険な誘惑の攻略本を探しているんですが、どこにあるでしょうか?」
 棚をしばらく探したがどこに何があるか分からなかったので、レジのお兄さんに小声で質問した。

「ああ、あの人気のボブゲですね。右の一番奥の棚の上から二段目にあると思いますよ」
 その店員は表情を変えずに親切に教えてくれた。さすが本場のプロの店員だ。例え「変態の倒錯サラリーマン」と認識したとしても表情が少しでも揺らぐようでは本当のプロとは言えない。

 それはすぐに見つかった。B5版の薄めの古本で、サランラップされているため試読はできず、三千五百円の価格シールがついていた。レアだけに足元を見た価格設定だが、躊躇わずに買った。

 僕はその本をバッグにしまい、店を出て五階への階段を上がっていった。ギャラクシー・コスモスの真上にあるそのショップはいたってシンプルな造りで、ロイヤルブルーに白抜きで「ファンタジー・シミュレーター」と書いたロゴのあるガラスの自動ドアを通ると、正面に銀行のATMのようなマシンがあった。マシンの左側に「入口」と表示された自動ドアがあり、右側には「出口」と表示された自動ドアらしきものが見える。無人のショップのようだ。

「会員番号を入力するかサービスカードを挿入してください」
という女声の合成音声が聞こえて、カードの挿入口に赤いランプが点滅した。

 僕は数分前に不思議な女性からもらったばかりの無料サービス券をそこに挿入した。すると、マシンの画面に
「あなたの会員番号は19xx0306RSです。緑の点滅をご覧ください」
と表示された。画面の上の緑の点滅を見つめると、約二秒後に点滅が消えて画面に
「虹彩の登録が完了しました」
と表示された。会員番号は僕の生年月日とイニシャルを組み合わせたものであり、その情報が既に無料サービス券に保存されていたと考えるのが妥当だろう。僕がギャラクシーコスモスに行くことを知っていたあの女性は、僕の生年月日とイニシャルまでも知っていたということになる。僕は少し怖くなった。

「お客さまの無料サービス券は乖離度一の体験を一単位受けるのに有効です。所要時間は五分間です。希望される場合はYESのボタンを押してください」
と画面に表示された。

 画面に表示されたYESのボタンにタッチすると、
「左の入り口からお入りください」
と表示された。

 左の入り口はタッチ式の自動ドアになっていて、「開く」と書かれた場所をタッチするとドアが開き、中に入るとドアが閉じた。それは真ん中にソファーがあるだけの小部屋で、あの女性が着ていたドレスと同じ深いロイヤルブルーの単一色で塗装されていた。僕が入って来たドアと推定される場所があることは分かったが、出入り口も何もない、約二畳の完全に閉じた空間だった。

 僕はソファーの真ん中に腰を下ろした。他の選択肢は思いつかなかった。僕はソファーに座ったまま、何かが起こるのを待った。

 顔を動かさずに目だけキョロキョロと上下左右を見まわしながら緊張と期待を高めていると、部屋が段々暗くなってきた。ベートーヴェンの田園を編曲した交響曲が静かに流れ始め、部屋が真っ暗になった時点では身体全体が揺さぶられる程の大音量になっていた。ヴィオラの奏者の一人一人がどこにいるかが認識できるほどのリアルな音響と臨場感だった。オーケストラの指揮者の後ろに奏者と向かい合わせにソファーが置かれているような気がした。

 僕の頭の中に引っかかっていた幾つかの些細な患いを大音響が跡形もなく吹き飛ばし、コントラバスの響きが背骨を震わせ、木管楽器から流れるメロディーが僕の肋骨と共鳴した。あの不思議な女性が「至高の安らぎ」と言ったのはこのことだったのだな、と感じた。僕の好きな「危険な誘惑」の一シーンがちらりと頭に浮かび、すぐに消えた。それは心をくすぐられる瞬間だった。軽いしびれが全身を包み、身体が空中に浮いている感覚があった。完全な漆黒の闇の中に、何もかもがきらきらと光り輝いていた。

 クライマックスの後、音量が徐々に低下し、しばらくすると静かになった。それは耳の中のキーンという音が大きすぎると感じられるほどの完全な静寂だった。

 真っ暗だった部屋に徐々に光が戻り、僕は深いロイヤルブルーの空間の真っただ中に腰を下ろしている自分に気付いた。

「ふうーっ」
 目を閉じて満足の吐息を出した時、出口の自動ドアが開いた。ソファーから立ちあがって出口から出ると背後でスーッとドアが閉まった。マシンを右手に見ながらファンタジー・シミュレーターのショップの出口から外に出て、狭くて急な階段を一階まで降りた。

 左手首の時計を見ると優樹菜との約束の時間まではまだ三十分以上あった。優樹菜のアパートは昭和通りを超えた佐久間町のリバーサイドにあり、徒歩で十分程度しかかからないが、少し早く行っても大丈夫だろう。

 その時、スマホにメール着信を知らせるバイブがあった。
「もし早めに秋葉原に着いたらいつでも来てくれていいわよ」
と書かれた優樹菜からのメールだった。僕が秋葉原に早めに来て約束通りの時間にチャイムを鳴らすように時間をつぶすだろうということを優樹菜は熟知しているのだ。

 佐久間町のアパートに着いて受付機に優樹菜の部屋番号を入力した。
「凜太郎です」
というと自動ドアが開き、エレベーターで三階に上がって優樹菜の部屋のチャイムをピンポーンと鳴らす。

「凜太郎、いらっしゃい、わざわざ来てもらってありがとう」
 優樹菜の顔を見るといつもホッとして心が温かくなる。僕は優樹菜をハグした。

「よしよし」
 優樹菜は僕の頭に右手を乗せて子猫のように撫でてくれた。

「どうしてだろう。優樹菜にボディータッチされると気持ちが落ち着くんだ」
 僕は本心からそう言った。

「ズボンの膝が汚れているけど、どうしたの?」
 優樹菜が気付いて僕に聞いた。

「そうなんだよ。デブのメイド服の女と正面衝突しちゃったんだ」
 僕は思い出したくもない今日の出来事について、優樹菜にぶちまけた。

「オッサン、じじい、とか言われたんだよ」

「気にする必要はないわ。単に、バカヤローという意味の下品な悪態に過ぎないわよ。凜太郎はスリムでスタイルが良いし、色も白いから実年齢の二十四以上には見えないわよ。小柄で小顔だから、ねえちゃん、とかオバサンとか言われたのなら気にした方がいいけど、オッサンと言われたんだったら相手がそう思ってなかったことは保証するわ」

「ひどい言い方だね。保証してくれても、あまり嬉しくないな」
 僕は口をとがらせて言った。

「まあいいから、ズボンを脱ぎなさい。膝の汚れを石鹸で洗うと良いわ。放っておくと落ちにくくなるから」

「じゃあそうしようかな」
 僕は立ちあがってズボンを脱いだ。優樹菜は僕の方を見ないように、テレビを見ていた。

 僕が股間の異常に気付いたのはその時だった。股間がスカスカしていて、何となく変だった。何か体験したことの無い感触がある。

「いつもより萎んでるみたいだな」
 僕はブリーフを下げて中を覗きこんだ。

「ギャーッ」
 大きな悲鳴を上げて、僕はへなへなとその場に座り込んでしまった。僕の股間に生えているべきものが消失して、そこには女性の割れ目があったのだ。

第二章 異性との同性愛

「どうしたの、凜太郎。何があったの?」
 僕の叫び声に驚いた優樹菜が飛んできた。

「無い、無くなってるんだ!」
 床に倒れた僕は、パンツのゴムを持ち上げてもう一度股間が平坦になってしまったことを確認した。

「何が無くなったのよ」
 優樹菜は僕のパンツを引き摺り下ろした。

「ホントだ。女の子になってる。うまくできてるわねえ。継ぎ目とか全く見えないし、膨らみも無いわ。おチンチンはお尻の方に引っ張ってその上をゴムで隠してあるのかしら」

 優樹菜は僕が女性器を模したゴム製の大人のおもちゃか何かを装着していると思いこみ、ゴムの継ぎ目を探して僕の足の付け根を指でまさぐった。割れ目と肛門の間を右手の中指で力任せにグイッと押したので、僕は「ああっ」と声を出してしまった。

「ホント、よくできてるわね。タマタマの膨らみも無くて完全に平らだもの。どこに隠れているのかしら」

 優樹菜は中指を割れ目に沿って走らせ、続いて割れ目に指を挿し入れてきた。生まれて初めての感触で僕は再び「ああっ」と声を上げてしまう。

「凄いわね。粘膜の感触まで本物そっくりだわ。冷たくないし、それに湿り気もある」

 優樹菜は面白がってオナニーをするように中指を動かし続けた。僕が首を後ろにそらして「はあっ、はあっ」と喘ぐのを見て、優樹菜は
「もう凜太郎ったら、成りきってるんだから」
と言いながら指を動かし続ける。

「あら、変だわ。濡れてきちゃった」

 わざと、ぴちゃぴちゃと音が立つように指を使う。僕はじっとしていられなくくなって身を捩る。

「どうしよう、これ本物みたい。凜太郎、本当に感じているのね」

 僕の顔を見てお芝居ではないことを理解した優樹菜は、僕の反応を見ながら、もっと喘ぐように指を使い続けた。初めての体感で僕は身体中が熱くなり、何が何だか訳が分からなくなってきた。優樹菜は右中指の挿入を繰り返しながら、中指の第二関節や親指を使って、割れ目の手前側にある突起物を刺激し、そのたびに僕の喉から高い声が漏れてしまう。クリトリスの感覚がこんなにシャープだとは知らなかった。

 優樹菜は左手で僕が着ていたポロシャツを脱がせ、乳首にキスした。その度に僕が胸をピクピクさせるのを見た優樹菜は、ザラザラした舌で乳首を片方ずつ舐め挙げた。僕は「イーッツ」と声を出してしまう。優樹菜はそれでも手加減せずに、左手の指を使って僕の耳や、脇の下や、おへその周りをくすぐり始めて、僕の身体がピクッと反応すると、その場所を重点的に攻め続けた。その間も右手と舌による刺激は続き、僕の頭の中は真っ白になり、太ももから頭のてっぺんにかけてジーンと電気が流れっぱなしになって来た。しばらくすると優樹菜の指が届かないお腹の奥がぴくぴくと痙攣し始めて、身体中の感覚がすっ飛んでしまった。

 気がつくと僕は優樹菜のアパートのクッションフロアーに裸で仰向けになっていて、お尻の下が濡れていた。優樹菜は僕のポロシャツとズボンで僕の身体と床を拭いて、僕の衣類を洗濯機のある場所に持って行った。

「どうして手術を受ける前に私と相談してくれなかったのよ。お互いに結婚を意識してると思っていたのに」

 優樹菜は僕を非難する口調で言った。

「優樹菜と結婚したいのに僕が性転換手術を受けるはずがないだろう。それに仮に手術を受けて膣を造っても、こんなに感じるのは無理じゃないかな。とにかく、突然こうなっちゃったんだ。僕も今はじめて気づいたんだ」

「そうよね、私もオナニーしてもさっきの凜太郎ほどにイクのは稀だもの。いいわね、あんなに感じられて」

「よくないよ。性器だけが女性になってしまって、僕はこれからどう生きて行けば良いんだ?」

「いつそうなったの? 前におチンチンを見たのはいつだったの?」

「秋葉原駅の改札を出る前に構内のトイレで立って小便した。その時から今までの約二時間のうちに起きたということだろうな」

「その二時間に何があったか、思い出しなさい」

「いつもと違うことと言えば、メイド服の女に衝突したことかな。あの女に超能力があって呪いをかけられたとか……。性器が変わるというのはボブゲの危険な誘惑と同じだけどボブゲはしょっちゅうやっていても実際に性器が変わったことは無いし」

「女の呪いの線は無いと思うわ。その危険な誘惑って何のこと?」

「ボブゲって聞いたことある?」と優樹菜に聞くと「無いわ」という答えが返って来た。僕はボーイズラブゲームと危険な誘惑について優樹菜に詳しく説明した。

「凜太郎がそんな変態ゲームをやっていたなんてショックだわ。危険な誘惑については理解できたけど、そのゲームの主人公に起きる身体の変化が、どうして現実の世界の凜太郎の身に起きるのよ?」

「まさにその点なんだ。僕も色々考えたんだけど、ひとつだけ思い当たることがある」

 僕はロイヤルブルーのドレスを着た女性からもらった無料サービス券による奇妙な体験について説明した。

「下の階で危険な誘惑のゲームのことばかり考えていて、すぐ後にファンタジー・シミュレーターの部屋に入ったし、音楽を聞いて気持ちよくなった時にゲームのことが一瞬頭に浮かんだんだ。それが中途半端な形で実現したんじゃないかな。でも、ゲームの中の相手の女子高生と性器を交換した状態で出て来たのは誤算だよね。元々の自分の性器のままで能力だけ身に着けて出てこられたら、今日優樹菜とディープキスをして性器を交換して遊べたのにね」

「一度やってみたい気はするけどね。ちゃんと元に戻れるんだったら。ちょっと待って、じゃあ凜太郎は男性と五秒以上のディープキスをしたら、その男性の性器を奪い取れるということになるわね」

「いやだよ、男とディープキスするなんて。そんな趣味はゼロだから」

「でも、今のままだと、結局そうなるわよ。凜太郎は豊胸手術するだけで明日にでも女になって男性の相手を出来るんだから。いえ、よく考えると、多分女性ホルモンが出る身体になってるでしょうから、何もしなくても一年もしないうちに、どこから見ても女性になっちゃうわよ」

「やめてくれ、変なことを言うのは。僕は女性にしか興味が無いんだ。何とかして優樹菜と結婚できる身体に戻らなくっちゃ」

 僕たちは一緒にバスルームに行って、お互いの身体を洗い合った。優樹菜の身体はいつもと同じだが、抱き合う感覚は全く違った。僕の股間にペニスが無いというだけで、二人の関係がこんなに違うなんて……。優樹菜と僕は身長が同じで、抱き合うと優樹菜のツンと上を向いた形の良いバストが丁度僕の乳首の位置に来る。ぐっと抱き寄せると、なんだか優樹菜の乳房が僕に乗り移ったような気がしてしまう。さっき優樹菜が言った、女性ホルモンの影響のことが頭にこびりついて離れない。元に戻れないまま時が過ぎていくと、僕は股間だけではなく身体全体が完全に女性化してしまうのだろうか。僕は先ほどの行為でどんな快感があったのか、シャワーを浴びながら優樹菜に詳しく話した。

 優樹菜は興味深そうに聞いていたが、「凜太郎の話を聞いていると、性器だけじゃなくて性感が完全に女性になってるわ。多分精神的にも女性化しちゃったかも」とポロリと言った。

「凜太郎、今夜は泊って行くんでしょう」

「勿論そのつもりで来たよ。でも、レズしかできないというのは予想外だけど」
 僕たちは顔を見合わせて笑った。

 風呂を出て優樹菜のバスタオルを借りて身体を拭いた。僕が着てきた服は洗濯機の中に入っていて、優樹菜は自分の洗濯物と一緒に洗濯機のスイッチを入れた。

「レズに相応しい服を貸してあげる」

 優樹菜はタンスの中からピンクのネグリジェのようなものと同じ色のパンティを出して僕に渡した。

「コットンレースのキャミソールワンピースよ。ルームウェアにも使えるけど、そのままネグリジェとして寝ていいのよ。可愛いでしょう」

 恥ずかしかったがレズと言ってしまったのは僕の方なので、少しゾクゾクしながらそのワンピースを着た。肩のストラップが幅広の伸縮性の素材になっている。同じ素材がアンダーバストの位置ですこしきつめにフィットしていて窮屈に感じる。裾は膝上約十センチの丈だ。

「ブラカップ付きだから胸が窮屈に感じるでしょうけど、凜太郎もこれから段々バストが大きくなってきたらブラが必要になるから今から慣れておくといいわ」

 優樹菜は虐めたっぷりに僕に言って、右掌でブラカップの上から僕の胸を持ち上げるような仕草をして、左手でスカートをさっと捲り上げ、僕がキャッと言ってしまったのを笑って冷やかした。自分は白地に花柄のパジャマを着ていた。

 それから僕たちは優樹菜が今晩の為に買ってあった食材ですきやきを作った。

 優樹菜とは中学一年から三年まで同じクラスだった。成績優秀な優樹菜は福島で最難関の県立高校に進み僕は何段階かレベルの低い高校に進んだが、二人とも東京の大学に入って交流が復活した。事あるごとに電話やメールで相談したり、時々会ったりする関係が続いている。僕にとって優樹菜は自慢の彼女で、優樹菜も僕を信頼してくれていた。

 僕たちはすきやきとお酒を楽しみながら時には夫婦のように、時にはレズカップルのように会話し、同じベッドに寝た。僕は優樹菜の横に寝て身体に触れるだけで幸せだったが、しばらくして優樹菜は僕のスカートに手を入れて、パンティの中に指を挿入し、濡れてくると僕に覆いかぶさってキスをした。僕は優樹菜のパジャマとパンティを脱がせ、両手と舌で胸を攻撃した。優樹菜は足の指で僕のパンティを脱がせたが、僕がネグリジェを脱ぐことを許さなかった。
「ワンピースを着た姿の凜太郎を犯したいのよ」
優樹菜は意地悪な目で言って、スカートの中のデリケートな部分に執拗な攻撃を加えた。僕も左手の中指で優樹菜の割れ目の中を攻め、二人は並んでお互いの首に手を回しながら一方の手でグチュグチュした相手の割れ目の奥とクリトリスを愛撫し続けた。僕たちは何度か意識を飛ばしながら、交互に訪れる絶頂と、同じものを相手に与えた悦びを交互に味わったのだった。


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