僕はネコである(TS小説の表紙画像)

僕はネコである
今日からメスネコになりなさい
「会社の中の境界線」続編

【内容紹介】男性がメスのペットにされてしまうTS小説で「会社の中の境界線」の続編。主人公の青葉麻有は既に原作の中で性転換手術を受けて女性になってしまっているので、本書の主人公は女性ということになる。人間の言葉を話すことさえ許されないペット扱いの実態とは?「会社の中の境界線」と「僕はネコである」はTSよりもペット化による被虐的な歓びに重点が置かれたハードな内容となっている。

まえがき

  本書は「会社の中の境界線」本編(全十五章)を読み終えた方のための続編です。本編を読まずに続編を読むと面白さが半減しますので必ず先に本編をお読みください。本編のストーリーに関する記憶が鮮明でない方は、本編を再読後、この続編を読まれるようお勧めします。

 続編「僕はネコである:今日からメスネコになりなさい」は題名から推測されるようにM度が高い小説です。主人公は本編で性転換手術を受けていますので、TS小説と言うよりはMレズ小説と言った方がよいかもしれません。性転のへきれきTS文庫の他の小説とは趣が異なる官能小説です。

 前の恋人に監禁されていた主人公の青葉麻有(マユ)は香月たちの手によって解放されて自由の身となり、会社勤めを再開しました。マユには新社長のアシスタントへの異動命令が出ますが、密かにマユを好きだったチームリーダーの香月はマユを新社長に奪われることを心配し、社内異動の歓送会の席でマユにプロポーズします。

「マユ、私と結婚しなさい。今日限り会社を辞めて私だけの子ネコちゃんになりなさい」

 香月のプロポーズを受諾して退職し、香月のアパートに住み着いたマユは、今後香月だけの子ネコとして暮らすよう命令されて厳しい規則を突き付けられます。それは、前の恋人のペットだった時よりも更に過酷なものでした。

  • 毎日二十四時間、この規則に一生従う
  • 言語はネコ語のみで人間語は禁止(思考を含む)
  • 着衣禁止
  • 二本足歩行禁止
  • 手を歩行以外に使用することの原則的禁止
  • トイレは砂場で
  • 餌はキャットフードを皿から直接口で食べる
  • 飲み物も皿から直接口で飲む
  • スマホ等はすべて廃棄

 マユは香月に言われるまま「香月だけの子ネコちゃん」として暮らすことになったのでした。

 香月のプロポーズを受諾して命令に従う事が、自分の人生にとってどれほど重大な事なのかをマユが本当に理解しているのかどうか、ちょっと心配です。マユはこのまま人間の言葉を捨てて四つ足での一生を送ることになるのでしょうか?

第一章 子ネコの幸せ

「マユ、おいで! 私の子ネコちゃんになったことがどんなに素晴らしいことかを分からせてあげるから」

 僕はニャーン、ニャーンと鳴きながら香月の後を追って寝室に行き、香月が指さしたベッドの上にピョンと飛び乗った。仰向けに寝て脚をM字に広げさせられた。香月はベッドの下手しもて側に屈みこんで僕の両膝を手で掴み、股間に顔を近づけて来た。香月の体重で股が裂けそうだ……。

「可愛いワレメちゃんね」

 僕の身体の大事な部分を至近距離から香月にしげしげと観察されて恥ずかしさで一杯になった。口笛を吹くように唇を突き出して恥ずかしい部分めがけてフーッと息を吹きかけられた。お尻の穴が縮み上がった。

 香月はコールドクリームをたっぷりと指に取り、僕のスリットを撫で上げるように中指を滑らせた。思わずヒイッと声が出た。

「それはネコの鳴き声じゃないわ、お仕置きよ」

 香月に中指と親指で花弁の端をキュッとつままれて、痛さのあまり「ミャン」と高い声が出てしまった。香月は中指をスリットに差し込んできた。指の先が僕の浅い膣の奥に突き当たったのを感じて、僕はニュアーと頭を反らせた。

「中指の第二関節の手前までしか入らないわ。まだ子ネコだから、オスの子ネコのおチンチンを受け入れるのに丁度いい深さにしといたのかな。うふふ」

 子供をバカにするような目で香月に見下ろされた。性転換手術の際にペニスが小さすぎたため、ひとまずごく浅い膣を作り、後日第二段階の手術でS字結腸を移植して深い膣を形成する予定だということを飛山部長から聞いていないのだろう。僕はそのことを香月に知らせたかったが、ネコ語だけで表現するのは到底不可能なことだった。

「浅い膣でも大丈夫よ。毎晩天国に送ってあげるから」

 香月はベッドの横に回って僕の乳首を舌の先で転がしながら、中指をもう一度奥まで差し込み、指の腹でクリトリスを撫でるようにして中指を引き出した。僕が感じてミューン、ミャーンと声を出したり身体を反り返らせたりすると、香月は同じところを何度も責めた。どこをどう触られたらどんなふうに感じるのかという僕の身体の秘密は一時間もしないうちにすっかり香月によって解き明かされた。

 僕の乳首の奥には芯のようなシコリができていて、押されるとギーンと痛い。乳首は以前より少し大きく長くなっている。香月のザラザラとした舌で舐められると、それだけでニィーッと声を上げてしまう。

 初めて僕の身体を弄ぶというのに香月は飛山よりもずっと上手で、僕は二時間ほどの間に三回も頭の中が真っ白になった。絶頂から覚めると、ベッドの上で香月がパジャマを着て寝ていて、僕はその腕の中だった。香月のことが愛おしくて仕方なく思われて、僕は右手で香月の胸をパジャマの上から包んだ。親指の腹を香月の乳首に乗せて、手で円を描くように動かして乳房を愛撫した。

 香月は「うーん」と言いながら目を開き気だるそうに「マユの手だったのね」と言った。僕は自分だけがイカせてもらうのは申し訳ないから香月にも良い気持ちになってもらいたいという気持ちをニャーン、ニャーンという言葉で説明した。

「大好きよ、私の子ネコちゃん。今日はもう寝させてちょうだい。今度する時には私もイカせてね。でもマユ、今、手を使ったでしょう? 子ネコちゃんは舌で奉仕するのよ。眠いから、違反したお仕置きは明日にするわ。オヤスミ」
と言って香月は眠ってしまった。僕も幸福感に身体全体を包まれて眠りに落ちた。

 

 翌朝、香月がベッドから起き上がったので目が覚めた。香月はトイレに立ち、顔を洗ってから化粧水をつけ、パンをオーブントースターにセットしてから服を着た。僕はトイレに行きたかったが、手を使ってトイレのドアを開けることは禁止されているし、忙しそうな香月を煩わせたくなかったのでベッドの上でゴロゴロしていた。

 しばらくして、「マユ、おいで」という声が聞こえたので僕はニャーン、ニャーンと言いながら飛んで行った。

「お水を一日分入れておいたから、ここで飲みなさいね」
 香月は部屋の隅に置いた土鍋を指さした。僕はニャンと返事した。

「昨日の夜のお仕置きとして、今日一日は餌は抜きよ。体重を減らさせたいと思っていたから丁度良いわ」

 昨夜僕が手で香月のお乳を触った時に、お仕置きは明日にすると言っていたが、香月はきっちり覚えていたのだ。お腹がグーッと鳴ったので、ニーンと鳴いて悲しさを訴えた。

「じゃあ会社に行くわ。良い子にしてるのよ」

 香月が靴を履こうとしたので僕はトイレの前に走って行って大きな声でニャーン、ニャーンと何度も鳴いた。

「忘れてたわ。ベランダに砂場を作るのは週末になるわね。それまではお風呂に便器を置いておくからそこにしなさい」

 香月は風呂に古い洗面器を置いて風呂のドアを開けっぱなしにしてから、「会社に遅れちゃうわ」と言ってあたふたと家から出て行った。

 

 昨日までは僕も朝起きたら服を着て出社していたのに、どうしてこんなことになっちゃったんだろう……。

 ここ二、三日に起きたことを思い出した。香月からプロポーズされたのは、つい一昨日の夜のことだった。
「付き合ってください」
と言われると思っていたら、
「私と結婚しなさい。今日限り会社を辞めて私だけの子ネコちゃんになりなさい」
と命令形で言われたのには戸惑ったが、その場で
「ハイ、よろしくお願いいたします」
と答えたのだった。

 その結果、昨日の朝、管理部長のところに連れて行かれて退職届を提出させられた。そして帰宅すると、本当に子ネコにされて、こんな風になってしまったのだった。

 飛山部長と違って香月は若くて公正で健康的だった。
「子ネコになりなさい」
と言われた時には香月が僕を子ネコのように可愛がってくれるという意味だと思った。だからハイと答えたのだ。今こうなってしまって考えてみると、香月の言葉には何の裏も無く、まさにその言葉通りに扱われているわけだから僕は不満を言える立場にはない。

 それに昨夜の僕の幸せは本物だった。香月との結婚がもたらした本当の幸せについて、僕には何の疑いも、後悔もない。

 でも、本当にどうしてこうなっちゃったんだろう? 僕はこんなことをしていていいのだろうか? 四つ足で立つと、微妙に尖がっている乳首と、おへその下のむき出しになった大事な部分が目に入って、恥かしさと寂しさに包まれた。

 僕の思考能力は確実に低下している。飛山から解放されて一日中普通の言葉を話す生活に戻ってから、七割がた回復したと感じていたが、今後ネコ語しかしゃべれない毎日が続くと思考力が急速に低下することは、前回の経験から考えて確実だ。いや、飛山のペットだった時には昼間会社に行っている間は普通に話すことが出来たし、柳大悟郎が飛山のマンションに転居して来てからは家に帰ると飛山と柳の会話も耳に入った。

 でも、香月の子ネコになった今、一日中ニャーンとしか声を出せない毎日がずっと続くのだ。このまま一生服を着る機会は与えられないかもしれない。僕は多分一ヶ月もしないうちに言葉を忘れ、猫としての思考しかできなくなるのではないだろうか。

 でも香月が幸せにしてくれるのだから、それでいいじゃないか、と思う自分がここに居る……。

 肌寒くなってきたので香月が台所の隅に畳んで置いてくれていたタオルケットを肩から被った。手を使うことは禁止事項だが畳んであるタオルケットを被るのは手を使わないと不可能だった。後ろめたい気はしたが仕方がない。部屋に監視カメラがセットされているわけではなさそうだ。香月に見られていなければ大丈夫だ。

 もし香月が帰って来て僕がタオルケットを手で扱ったのではないかと問い詰められたらどうしよう。僕はニャニャンと首を振って否定しよう。それでもまだ信じてくれないようだったら、口でタオルケットを引っ張って床の上で伸ばし、その下に潜り込むことによって肩から被れば良いのだ。

 大丈夫だろうか? 僕は後で香月にお仕置きをされることが怖くなってきて、肩から被っていたタオルケットを、いけないことだと思いながら手で畳み直して元の場所に置いた。そして、口で引っ張って四つ足で広い場所に持って行き、苦労して広げてから、口で噛んだり身体を捩じらせたりして何とかタオルケットの下に潜り込んだ。良かった。これを香月の前でやって見せれば信じてもらえるだろう。僕はもう一度練習しておこうと思い立ち、タオルケットを手で畳んで台所の隅に置き直して、口で引っ張ることからやり直した。タオルケットの下に潜り込む所までスムーズに成功すると、疲れてウトウトした。

 どのくらい眠っていたのか分からないが喉が渇いて目が覚めた。四つ足で水を入れた土鍋の所まで歩いて行ってペチャペチャと水を飲んだ。お腹がグーッと鳴ったが食べ物はない。昨日の夜僕が香月のお乳を手で愛撫したことのお仕置きとして今日は餌抜きなのだった。空腹を紛らわすためにもう一度土鍋に口をつけた。舌を使って舐めるように水を飲む。はかどらない。でも時間はたっぷりある。何も用事をする必要は無い。一日中ぼんやりして香月の帰りを楽しみに待つだけでいいのだ。今日も、明日も、そして一生ずっと……。

 香月のことを考える。すらりと伸びた手足、凛とした顔、バランスの取れた身体、高い身長、賢くて決断力のある頭脳、そして優しさ。会いたい。早く帰ってきて欲しい。目を閉じて香月の事で頭の中が一杯になる。香月に頭を撫でられている自分を想像する。ニャーンと声に出して言ってみる。当たり前のように自然にニャーンと言っている自分が可笑しくなる。このニャーンは「大好きです」というニャーンであって、「ご主人さま、こちらを向いてください」という意味のニャーンとは語尾が少しだけ違う。僕自身のネコ語のボキャビュラリーはこんな風に少しずつ増えていくのだろう。

 時計を見上げるとまだ十時だった。香月の帰宅は早くて午後七時だ。まだ九時間も先だ。今朝起きてからまだ三時間と少ししか経っていないのだ。その三倍もの時間、僕はひとりで何をすることもなく香月を待っていなければならない。寂しい……。

 その時僕の頭に悪魔の声が聞こえる。
「テレビを見よう。監視カメラは付いていないんだから僕がテレビのスイッチを入れたことがご主人さまに分かるはずが無い」

 悪魔が僕の手を動かしてリモコンを握らせ、電源ボタンを指で押させた。ニュース番組が流れている。何日か前にストーカーに刺されたアイドルが意識不明という報道を聞いて心配していたが、その女性が意識を取り戻したというニュースだった。ああよかった。僕は心から嬉しかった。チャンネルを変えると都知事の政治資金の私的流用のニュースが流れていた。僕はそのニュースには飽き飽きしていて見るのも嫌だった。都知事がのらりくらりと言い逃れを続けている姿を見ると気が滅入って、そんな映像を見せられるぐらいだったら猫にでもなった方がマシだと思っていた。色々チャンネルを変えた挙句、ニュースやバラエティー番組は今の僕には面白くないし、これからの猫としての僕にとって意味が無いことだという気がした。CSで子供用のマンガをやっていたのでそのチャンネルを見ることにした。床に置いたタオルケットに手を使わずに潜り込み、ウトウトしながらマンガを見ていたら眠ってしまった。

 ぐっすりと眠っていたらしく、目をうっすらと開けて時計を見ると午後三時になっていた。朝、土鍋の水を沢山飲んでしまったようで、尿意だけでなく、下痢をしそうだった。今朝香月から、風呂場に置いた便器で用を足すようにと言われたが、下痢をしてお尻が汚れたら拭かずには居られない。ずっと四つ足で立っているのならとにかく、部屋の中で汚いお尻のまま座ると床やカーペットが汚れるし、タオルケットにウンチがつくと思うとぞっとする。僕は香月の命令を破るのはイヤだし怖かったので、トイレのドアを手で開けて便器に腰を下ろして用を足した。ウォッシュレットですっかりきれいにしてからトイレットペーパーで水分を拭きとった。手でレバーを回して水を流し、洗面所で石鹸を使って手を洗い、タオルで手を拭いた。ホッとして立って歩いて台所に戻り、コップで水を飲もうかと思ったが、それはイケないと思いなおして、土鍋の水に口をつけてのどを潤した。

「退屈だなあ、早くご主人さまが帰って来ないかなあ」

 叫びたくなるほど香月に会いたかった。もう一度タオルケットにくるまってリビングのカーペットにごろりと横になった。香月の顔を思い浮かべ、頭を撫でられている自分を想像した。空腹と寂しさが重なって惨めになり、半泣きで目を閉じたら眠ってしまったようだった。

「マユ、起きなさい」
 香月の優しい声で目が覚めた。

「一人でお利口にしていた? 私のことが恋しかったでしょう」

 僕はニャーンと心から答えて、香月の足元に歩いて行って身体を香月の足に擦りつけた。

「いい子ね、マユは」
 香月の指で髪を梳くように撫でられて天に昇る思いだった。

「あらっ? テレビのリモコンはテレビの横に置いて行ったはずなのに、どうしてテーブルの上にあるのかしら?」
 僕は心臓が止まりそうになった。しまった。リモコンを元の場所に戻さずに眠ってしまったのだった。

 香月はリモコンの電源ボタンを押してテレビをつけた。子供向けの映画が放映されていた。
「私、こんなチャンネルは見ないわよ。今朝はフジテレビを見てスイッチを切って出て行ったから、今スイッチを入れたらフジテレビが映るはずよ。マユ、規則を破ったのね!」

 僕は言い逃れはできないと観念した。反省の気持ちを表すことだけが救われる道だと判断し、頭を床に着けて丸くなった。

「水はちゃんと飲んだみたいね。トイレはどうかな」
 香月は風呂場とトイレをチェックして戻って来た。

「マユにはガッカリしたわ。トイレでウンチしたのね。トイレットペーパーの隅を折っておいたのが平らになっている。洗面所の石鹸が裏返っているし、タオルの裾が湿っているわ」

 僕は風呂場の便器で下痢をして拭かずにいたらどんな不都合があるかを必死で言葉と手振り身振りで訴えたがネコ語での表現には限界があった。

「言い訳は聞きたくないわ」
 香月に冷たく言い放たれた。

「マユ、もしかしてそのタオルケットも手で広げて使ったのね」

 その質問に対しては僕はニャニャンと自信をもって否定した。

「うそおっしゃい」
 香月はタオルケットを畳んで台所の隅に置いた。

「どうやって使ったのよ? やってみせて」

 僕はタオルケットの端を噛んでリビングまで引っ張って行き、上手に這いこんで肩まで被りゴロンと横になるのをやって見せた。これで四回目だ。完璧にできた。

「ゴメンネ、疑って」
 香月は屈んで僕の身体を撫でてくれた。そして僕に顔を近づけて「何度練習したの?」と聞いた。僕は三回練習したことをネコ語で答えた。

「毎回手で畳んでから練習したのね?」
と言われて身体が竦んだ。そう疑われることを忘れていたのだった。僕は丸くなって容疑を認めた。

「マユ、よくそんなに何もかも言いつけを破って平気でウソが通ると思ったわね。どんなお仕置きをしても足りないわ。死刑よ」

 僕の身体はすくみあがった。

「お仕置きの内容はこれから考えるけど、まずは是正措置を講じなきゃ。できればこれは使いたくなかったんだけど、マユの場合はこれを使うしかなさそうだわ」

 香月は自分の部屋の物入れの上の段の引き出しから何かが入った布袋を持ってきた。

「手を出しなさい」

 香月は僕の手にグローブのようなものを被せた。小さめのグローブだが、指の部分が内側に折り曲げられていて、動物の手のように丸くなっている。奥まで手を差し込むと香月はベルトを強めに留めた。両手にグローブをはめられて、僕は指が使えなくなった。

「もうこれで水洗便所を使ったりテレビを見たりは出来ないわ。次はトイレね。もう暗いけど、材料は揃っているから今作業をしておきましょう」

 香月はベランダに行って子供用の浅いプールセットを広げて砂を敷き詰めた。

「これからはここがマユのトイレよ。頭で押して出入りできるドアは週末に作ってあげる。それまではドアを少し開けてカーテンをしておくから、カーテンを頭で押して出入りするのよ」

 僕はニャーンと答えて、カーテンを頭で押してベランダに出てみた。砂場に座るとお尻がヒンヤリした。これからはここに座って用を足さねばならないのだ。惨めだった。カーテンを押して中に入ると、お尻についていた砂が床に落ちるパラパラという音がした。

「どうしてもネコが砂を家に持ち込むことになるわね。掃除が面倒だわ。それにネコがウンチの付いたままのお尻で家の中をウロウロすると不潔ね。ネコが動いてもいい区画を限定する必要がありそうだわ」

 香月がブツブツと独り言を言っていた。香月が僕の事をマユと言わずにまるで動物のように「ネコ」と言っているのを聞いてショックだった。

「早く対策を講じなかった私も悪いからお仕置きは最小限にしてあげる」
 僕はホッとして香月にニャーンと身体をすり寄せた。

「餌を一日中抜くのは一週間だけ、次の一週間は夕食と昼食を抜いて、その次の一週間は夕食だけ抜きにするわ」
 ただでさえ空腹でフラフラしていた僕は力が抜けてその場に崩れ落ちてしまった。

「むち打ちは最初の一週間は朝夕十回ずつ、次の一週間は夜だけ十回、最後の一週間は夜だけ三回ということにする。さあ、今夜の分をやるからお尻を出しなさい」

 いつ買って来たのか、香月は細い皮の鞭が棒の先についたものを持ってきて、いーち、にー、さーん、とゆっくりと数えながら僕のお尻を十回鞭打った。手加減をしてくれていることは分った。ニヒーッ、と声を出しながら耐えた。痛かったがそれ以上に惨めだった。どうして僕は香月のプロポーズを受けてしまったのだろうかと思った。会社を辞めずに社長秘書見習い兼社長の愛人になった方が幸せだったかもしれない。あの社長は独身だったからあわよくば奥さまにしてもらえたかもしれない。僕が香月を大好きなことに変わりはないが幾ら好きな人でもペットとしてしか扱われないのは悲しすぎる。

「何よ、その顔は。私ははっきりと子ネコちゃんになって欲しいとプロポーズして、マユがハイと言ったからその通りにしてあげているんじゃないの。今更イヤだと言い出しても遅いわよ。人間なら離婚できるけど、もうマユは私の所有物だから私が捨てない限りは一生私のネコのままなのよ」

 僕は頭の中を見透かされてシュンとなった。

「問題はマユをベッドに上げるためにはお風呂で洗ってから、翌朝まで清潔にさせなきゃならないということね。グローブをつけたままお風呂に入れると濡れるから、翌朝まではグローブを外させることになる。お風呂の後翌朝までトイレに行くのは禁止するにしても、どうしても行きたくなったら私がトイレに連れて行くしかないということか」
と香月は独り言を言った。

 よかった。夜一緒に寝てくれないのならプロポーズを受諾した意味が無くなるところだった。


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