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グルは知っていた

トランスジェンダー探偵ハンナ・ブラウンの事件簿 3

原作:What the Guru Knew

Hannah Brown Transgender Sleuth Mystery III

by Yulia Yu. Sakurazawa

第一章 至福の住処

アナンダ・クティーラム。 その名が意味するのは『至福の住処』。名前そのものが、約束手形のようだった。

ブラッドリーとの、どんな口論よりも雄弁になってしまった沈黙。いまだに服に染みついているジェニファー・キングの香水の残り香。他人の暴力的な秘密を解き明かしながら、自分自身の秘密はもつれていくばかりという、骨の髄まで蝕むような疲労。めちゃくちゃになった自分の人生の破片から逃れるための、聖域となるはずだった。

バンガロールから五十キロ。埃と騒音の層を突き抜けるようなドライブの末、タクシーが私道に入ると、世界のボリュームがすっと絞られた。ジャスミンと湿った土の匂いが空気に満ち、三百エーカーの広大な敷地が、まるで秘密の庭のように目の前に広がった。 けれど、私は知っている。平穏なんて、シャボン玉みたいに薄くてきらきらした膜一枚で成り立っている、巧妙な幻想にすぎない。この場所も例外ではないと感じた。静寂という上辺だけの化粧を施しているけれど、息を詰めると、その下から腐敗の匂いがした。モンスーンの湿気のせいではない、苦い腐臭が。

今、私は高いドーム天井の広大な瞑想ホールで、織物のマットの上に座り、彼を見ていた。スワミ・サダナンダ。 彼はただそこにいるのではなかった。高くなった舞台の上の空間を、隅々まで掌握していた。サフラン色の衣は完璧な夕焼けの色で、滑らかな褐色の肌との対比が鮮やかだ。聖なる紐が、贅肉なく鍛えられた胸を斜めに横切っている。それは禁欲ではなく、鍛錬によってのみ得られる肉体だと語っていた。彼は意識についての説法をしていて、その声は静かなホールの中を、柔らかく、人を惹きつけてやまない潮流のように流れていく。

これまで見たどんな人間よりも美しい男だった、と認めざるを得ない。アーモンド形の瞳、すっと通った鼻筋、時折ありえないほど白い歯を覗かせる豊かな唇といった、整った顔立ちだけではない。彼の存在そのものが持つ力だ。カリスマが物理的な熱量となって、ホールとそこにいるすべての人を包み込んでいた。 けれど、私の探偵としての本能――ブラッドリーに言わせれば『呪い』――は、その完璧なふるまいの裡にある綻びを見逃さなかった。信奉者の一人ひとりに視線を注ぐ前に、彼の瞳に一瞬だけちらつく計算高さ。その微笑みが、いかに戦略的に、的確に繰り出されているか。彼は、自分が他人に与える影響を、痛いほど自覚している男だった。

罪悪感が、慣れ親しんだ痛みとして胸を刺す。私たちの間にどれほどの亀裂が走っていようと、私はまだブラッドリーの恋人だ。それなのに、禁欲的な聖職者の魅力を、頭の中で品定めしている。

第二章 グルの眼差し

導師グルの説法は、意識という雲を掴むような話から、タントラセックスという、ずっと生々しいテーマへと移っていった。香の匂いがすでに充満していたホールに、新たな、言葉にならない緊張が張り詰めていく。彼は降伏について、他者の肉体の中に神性を見出し崇めることについて、そして肉体を超えて至上の歓びを得ることについて語った。その声は催眠術のように、足元で聞き入る信者たちの上に降り注いでいた。

私は他の人々の顔を窺った。ウクライナ人の女性、ナタリアは、背筋をまっすぐに伸ばし、膝の上で固く手を握りしめている。その美貌は、こわばった顎の筋肉が微かに震えることで、かえって張り詰めた印象を与えていた。隣に座る夫のオレグは、石の砦のようにどっしりと構え、不気味なほどの集中力でグルを見つめている。そして彼女の弟、ミハイル。青白い顔をした、落ち着きのない青年だ。指の関節を何度も鳴らし、その白い骨が浮き出て見える。隅に座る政治家、ディワカル・シェティは、磨き上げられた、何も読み取れない表情で、ただこの光景を観察していた。

「肉体は寺院です」グルの声は猫なで声で、その手は流れるように、人を惑わす優雅さで動く。「しかし我々は、その最も神聖な扉に鍵をかけ、社会的、宗教的、個人的なタブーに縛られている」

そして、彼の眼差しが、私を捉えた。

それは、視線というより、所有の行為だった。巨大なホールが収縮し、他の信者たちは色褪せた背景へと溶けていく。彼の視線が放つ熱だけが、物理的な圧力となって、私の腕の産毛を逆立たせる。彼は微笑んだ。祝福であると同時に、挑戦でもあるような、全てを知り尽くした笑み。それは親密さのパフォーマンスであり、私はその、望まぬ主役にされてしまった。

「娘よ」彼の声は、外で木の葉が擦れる音さえも黙らせる、静かな命令だった。「お前は大きな荷を背負っている。来なさい。導師グルの膝の上へ」

声にならない、さざ波のような息を呑む音がホールに広がった。全ての視線が、私の方へと向きを変える。頬が燃えるように熱い。その要求はあまりに常軌を逸していたが、彼はそれを神聖な招待として提示した。拒絶することは、祝福を拒むことであり、この信仰の劇場で、自分はそれに値しない人間だと宣言するようなものだ。グルは性別を超越した存在で、その接触は恩寵であり、信者にとっては父親のようなものだ、という決まり文句を思い出した。けれど、舞台の上のあの男は、父親のようには到底思えなかった。

自分の身体が、まだ着慣れない衣装のように感じられた。オリーブグリーンのハーレムパンツは野暮ったく、ベビーピンクのTシャツは、私が大金を投じて手に入れたこの胸の輪郭を、あからさまに強調しているように思えた。私は立ち上がり、硬い動きで、部屋中の無言の審判に晒されながら、長い道のりを舞台へと歩いた。

彼は、完璧なまでに慈悲深い落ち着き払った表情で、筋肉質な太腿をぽん、と叩いた。私はその膝の端に、自分の体重が新たな不安の種になりながら、そっと腰掛けた。サンダルウッドと、石鹸のような清潔で鋭い何かの匂いがした。

「お前の人生は、うまくいっておらぬな」彼は私にだけ聞こえる低い声で、そう断言した。それは純然たる魔術で、私の防御をすり抜け、真実の琴線に触れた。

「安らぎが、ありません」私は囁いた。その告白は、引きずり出されたものだった。

彼の手が、私の背中に置かれた。温かく、重い手。それは何気ない権威をもって、私の背骨のラインをなぞり、腰のカーブを越えて、下へと滑っていった。これは、親が子をあやすような手つきではない。鑑定家の手つきだった。彼の指は長く優雅だったが、その探求は几帳面で、何かを探しているようだった。薄いコットンのパンツ越しに、彼の指が臨床的な好奇心で身体を押し、探るのを感じた。彼の視線は私の顔から離れなかったが、その意識は別の場所――彼の手が集めている情報――にあるのがわかった。

彼の瞳に、狩人のような、ほとんど超越的とも言える渇望が閃くのが見えた。そして、それと同じくらいの速さで、その感情は消え去った。彼の手が止まる。瞳にあった興味が、平板で冷たい失望へと凝固していくのがわかった。彼は何か特定のものを探していて、それが見つからなかったことで、私の存在は彼にとって意味をなさなくなったのだ。侵害されたのは、触れられたことそのものではない。値踏みされたという、その事実だった。

想像しただけかもしれないほど微かな溜息をつき、彼は首にかけていた黒っぽいルドラクシャの数珠を外し、私の頭から通した。木の実は、肌にひやりと冷たかった。

「これを身につけなさい」彼の声は、今や無関心で、突き放すようだった。「すべての問題が消え去るだろう」

彼は手首を軽く振って、私をマットに戻るよう促した。謁見は終わったのだ。

私はふらつく足で自分の場所に戻った。ルドラクシャの数珠が、鉛のように重く感じられた。私がエントリーしたことさえ知らなかったコンテストの、残念賞みたいだ。グルは説法を再開し、その声は再び滑らかな、催眠術のような川の流れに戻っていた。けれど、もう魔法は解けていた。糸が見えた。人形遣いの姿が見えた。

マットの上から、私はもう一度ナタリアを見た。彼女の瞳は閉じられていたが、一筋の涙が頬を伝っていた。ホールの強制された静寂に対する、静かで、きらめく反逆のように。オレグの手が、彼女の膝に置かれている。獰猛で、無力な、守りの仕草。ミハイルはグルを凝視していた。その青白い瞳はもはや神経質に揺れてはおらず、冷たい、静かな炎を宿して燃えていた。

グルの眼差しが、再び部屋を見渡す。自らの領地を見渡す、慈悲深い王のように。一瞬、その視線が私をかすめ、私は同じ冷たい拒絶を、完全に、跡形もなく消し去られたような感覚を味わった。 至福の住処、と私は胸の重い数珠を感じながら思った。ここは魂が天秤にかけられ、安らぎの代価が、自分自身のかけらであるような場所だった。

第三章 静寂の崩壊

グルの説法は、小さな物事に喜びを見出すことについて、穏やかな言葉の川となって流れ続けていた。けれど、ホールの平穏には、もう何かが混じってしまっていた。少なくとも、私の心は。ルドラクシャの数珠が、肌の上で冷たく重く、導師グルの奇妙で、土足で踏み込んでくるような値踏みを思い出させる。私は呼吸に集中しようと、彼の背後で蛍光色の光を放つオームのシンボルを凝視しようとした。けれど、世界はまだ少し傾いたままで、空気は濃く、吸い込みにくい。聖水の苦い後味が、喉の奥にこびりついている。

その静寂の泡が弾けたのは、その時だった。

ホールの後ろにある重い木製の扉が、石の壁に叩きつけられるようにして、けたたましい音を立てて開いた。戸口に、男がシルエットになって立っている。顎の肉が垂れ、太鼓腹のその男は、ぜえぜえと荒い息を吐いていた。その瞳には、部屋の端からでもわかるほどの殺意が宿っていた。ガラスの家の中に突如として現れた、純粋な怒りの嵐そのものだった。

誰かが反応するよりも早く、彼は動いていた。中央の通路を、その巨体からは想像もつかない速さで突き進んでくる。動きと怒りが一体となった残像のようだった。その標的は、壇上で静かに結跏趺坐を組む、あの男だ。彼は壇上に駆け上がると、スワミ・サダナンダに掴みかかった――平手で打ち、引っ掻き、その爪は導師グルの剥き出しの肌に食い込んだ。

「この人でなしが!」男は、何年も発酵させてきたような毒を含んだ声で、唾を飛ばした。「袈裟を着たサディストめ!てめえのせいで、俺の人生はめちゃくちゃだ!」

私たちは皆、凍りついていた。衝撃に打ちのめされた、一枚の絵画のように。導師グルの熱心な信奉者であるシヴァとアショクでさえ、信じられないといった表情で顔をこわばらせ、身動き一つできなかった。

攻撃者の言葉が、痛みと屈辱の奔流となって溢れ出す。「十五年だぞ!十五年もあんたに仕えてきた!その結果がこれか?たった五十三万ルピーのために!お前は億単位で稼いでるくせに、俺のたった一度の過ちを見逃せなかったのか?あんたの足にキスまでして!土下座して頼んだんだぞ!それなのにあんたは石みたいに冷たかった!俺をクビにしやがった!」

スワミ・サダナンダは、その獰猛な攻撃に晒されながらも、超然とした落ち着きを保っていた。腕で顔を庇うその動きは、無駄がなく、優雅でさえあった。「落ち着きなさい、プラヴィーン・クマール」彼の声は、腹立たしいほどに穏やかだった。「君には技術も経験もある。他の組織なら、喜んで君を雇うだろう」

「喜んで雇うだと?」プラヴィーン・クマールは唾を吐きかけ、その顔は危険なほど赤黒く染まっていた。「笑わせるな、この野郎!俺の顔はテレビや新聞で晒し者にされたんだぞ!十年経った今でも、誰もが俺の顔を覚えてる!子供たちは大学に行かなきゃならないのに、俺たちは路頭に迷ってるんだ!全部お前のせいだ、この汚らわしいクズが!」

「リラックスしなさい、プラヴィーン・クマール」導師グルは、癇癪を起こす子供をなだめる辛抱強い大人のような口調で言った。「深呼吸をして。自分の中心に意識を向けなさい」

「そんなことするか、この犬が!」プラヴィーン・クマールは怒鳴った。「今ここで、みんなの前で、お前を殺してやる!」

その脅迫の言葉は、鋭く、殺傷能力を持って宙に突き刺さった。言葉が終わるか終わらないかのうちに、プラヴィーン・クマールの巨大な両手が、スワミ・サダナンダの滑らかな首に巻き付いた。導師グルの目が、一瞬だけ本物の驚きに見開かれ、ついにその落ち着きにひびが入った。彼は喉を詰まらせ、身体を痙攣させ、足は虚しく宙を蹴った。静かな超然とした仮面を被っていた彼の顔が、見る間に恐ろしい青色に変わっていく。

その光景が、私を金縛りから解き放った。これはもう見世物ではない。殺人未遂だ。私はよろめきながら立ち上がった。それと同時に、シヴァとアショクも、師が絞め殺される光景に突き動かされ、麻痺から覚めて行動を起こした。

三人がかりで、男たちに飛びかかった。私はプラヴィーン・クマールの太い手首を掴み、導師グルの喉からそのずんぐりした指を引き剥がそうとした。鋼の万力みたいだった。シヴァとアショクが全体重をかけて彼にぶつかり、不格好で必死の格闘の末、なんとか彼を引き離すことに成功した。

獲物から引き離されると、プラヴィーン・クマールから闘志が一度にすうっと抜けていった。殺人鬼のような怒りは、広大で空虚な疲労感に取って代わられていた。彼は一瞬、息を切らして立っていたが、やがて乱れた髪を撫でつけ、しわくちゃになった襟を正した。そして、もう一言も発することなく、彼は振り返り、壇上を降り、影のように静かにホールから出ていった。

深い沈黙が降りた。導師グルの荒い息遣いだけが、その静寂を破っていた。『至福の住処』は侵害され、その神聖な平和は粉々に砕け散った。そして、信者たちの呆然とした顔の中に、私は新たな、恐ろしい認識が芽生えるのを見た。彼らの聖人は死すべき存在であり、その命を狙う敵がいるのだ、と。

第四章 魂の姉妹

スワミ・サダナンダが丹精込めて作り上げたアシュラムの平和という幻想は、瞑想ホールの床の上で、無残なまでに砕け散っていた。プラヴィーン・クマールの剥き出しの怒りが、静寂という薄っぺらい上辺を突き破り、後には瞑想的な静けさよりもずっと重く、不穏な沈黙だけが残された。信者たちが動揺した導師グルを助け起こし、ジュースや塗り薬を手に大げさに騒ぎ立てる中、私はその場にいたたまれなくなった。無理やり取り繕われた穏やかさという、息の詰まるような空気から逃げ出したかった。

気づけば、女子寮へと続く小道を歩いていた。頭の中では、あの暴力的な光景が何度も再生される。会計士の目に宿った、どす黒い憎悪。見る間に青く変色していった、導師グルの顔。あまりにも、生々しすぎた。

「……壮絶でしたね」

低く、ハスキーな声。独特のスラブ系のイントネーションがあった。振り返ると、ナタリアが立っていた。瞑想ホールにいた、あの美しいウクライナ人の女性。彼女もホールを出て、私の後を追ってきたらしかった。北欧系の白い肌が、今は青白く見える。

「壮絶、という言葉では足りないくらい」私は同意した。「食欲も、あの殺伐とした空気の中に置いてきてしまったみたい」

彼女の唇に、小さく、悲しげな笑みが浮かんだ。「その気持ち、わかります」 私たちはしばらく、言葉もなく歩いた。絡み合った髪のように気根を垂らす、古いガジュマルの木々が作る日陰の中を。フランジパニの甘い香りが空気に満ちていたが、その香水でさえ、まとわりつく恐怖の匂いを完全には消し去れない。

「ハンナです」私は言って、手を差し出した。

「ナタリア」彼女は私の手を取った。彼女の手は大きくて力強く、握手はしっかりとしていた。「でも、ここの出身ではないのですね。あなたのアクセント」

「話せば長くなるんです」私は苦笑した。「アングロ・インディアン。生まれも育ちもバンガロールだけど、イギリス系の血筋が、財布の中身には影響しなかったくせに、声にだけは跡を残してしまって」私は一瞬ためらってから、自分のかけらを少しだけ差し出すことにした。「ここに来たのは……ストレス解消のため。故郷で、色々とこじれてしまって」

ナタリアの眼差しは、鋭かった。その淡い青色の瞳は、儀礼的な会話の奥にあるものまで見通すような深みを湛えている。「こういう場所を求める人は、大抵そう。壊れてしまったものを、癒してくれると約束してくれるから」

「それで、効果はあった?」私はそっと尋ねた。「あなたにとっては?」

彼女は視線を逸らし、どこまでも続くかのように手入れされた芝生に目を向けた。「私、気管支喘息なんです」平坦な声だった。「もう何年も、苦しんでいて。キエフの友人が、スワミ・サダナンダには特別な治療プログラムがあると、治せると教えてくれた。だから夫と、弟と……三人で来たんです」

「それで?」

彼女は、ほとんどわからないくらい微かに、首を横に振った。「期待していたものとは、違いました」 その短い言葉には、あまりに深い失望が込められていて、まるでそれ自体が私たちの間に存在する、物理的な重みのように感じられた。そこには物語があった。喘鳴のする肺よりもずっと深い傷が。けれど、これ以上踏み込んではいけないと、私にはわかった。

開けた場所に出ると、二人の男が待っていた。すぐにわかった。夫のオレグと、弟のミハイルだ。オレグのずんぐりした身体からは守るようなエネルギーが放たれ、ミハイルはと言えば、ただ神経質な緊張感だけでその身体を保っているように見える。

「ハンナよ」ナタリアが、夫を見上げて柔らかい声で言った。

オレグは頷き、その親切そうな、しかし油断のない黒い瞳で、私に短く礼儀正しい笑みを向けた。どんな嵐にも耐えられそうな、頼り甲斐のある男、という印象だ。しかし、ミハイルが一歩前に出た時、奇妙な変化が起きた。二人の男の間に、氷の壁が立ち上がったかのように。オレグの身体はこわばり、それまでの穏やかな態度は消え失せた。ミハイルの方も、義兄の視線を完全に避け、その青白い瞳は私の肩越しの遠い一点に固定されている。彼は私に、曖昧で、どこか上の空といった様子で頷くと、落ち着きなく指の関節を鳴らし始めた。

その敵意は、ナイフで切り裂けそうなほど濃密だった。これが、ナタリアがほのめかしていた亀裂。ただの意見の相違ではない。南国の熱気の中で繰り広げられる、冷戦だ。

「少し、散歩していたの」ナタリアが、二人の男の間に広がる沈黙の裂け目を埋めようとするかのように、努めて明るい声で言った。オレグは肯定するように唸り声を上げると、もうさっさと小道の先を歩き始めていた。ミハイルは私たちの数フィート後ろを、そのひょろりとした身体を落ち着きなく、どこかちぐはぐに動かしながらついてくる。

ナタリアは静かに溜息をついた。その音は、疲れたような悲しみに満ちていた。「ごめんなさい」彼女は私に囁いた。「いつもこうじゃないの。二人とも……私のことは、とても愛してくれている。でも、男の人とそのプライドって、本当に」

「大丈夫」私は言った。本心からそう思った。複雑な人間関係なら、よく知っている。

私たちは再び、オレグの決然としたペースに合わせて歩き出した。「大変なことよね」ナタリアが不意に、打ち明けるような低い声で言った。「自分が本来あるべき姿になる、っていうのは。外側を、ようやく内側と一致させることって」

心臓が、大きく跳ねた。 あまりに的確で、あまりに深く、私自身の旅路と共鳴するその言葉は、まるで合言葉のようだった。彼女はただ喘息を克服するとか、精神的な平穏を見つけるとか、そういう話をしているのではなかった。私たちの人生の、根源的な闘いについて話しているのだ。彼女は私を、導師グルの土足で踏み込んでくるような眼差しが決してできなかったやり方で、本当の意味で、見ていた。

「ええ」私は、感情で詰まった声で言った。「すべてを、懸けるくらいに」

彼女は私を見た。そしてその淡い青色の瞳の中に、私はすべてを見た。闘いの共有された歴史、ささやかな勝利、いまだに残る傷跡、そして、自分自身をゼロから築き上げるために、どれほどの代償が必要かという、揺るぎない知識。私たちは身の上話をしたり、秘密を打ち明けたりする必要はなかった。その瞬間、ガジュマルの木々が見下ろす中で、私たちはただ、姉妹になった。この奇妙で不穏な至福の住処で、静かで、言葉にならない同盟という絆が、結ばれたのだ。

第五章 復讐の囁き

午後の瞑想は、張り詰めた静寂のセッションだった。プラヴィーン・クマールの怒りの残像が、いまだにホールの空気に染みついている。スワミ・サダナンダが内なる調和について語る言葉は、大きな傷口に貼られた、頼りない絆創膏のように空虚に響いた。セッションが終わると、ナタリアが蓮の池のほとりで私を見つけた。その表情は、うんざりしていた。

「あの薬みたいな小麦の麦芽飲料は、もう一杯も飲めないわ」彼女は、共謀者のように声を潜めて言った。「草を煮詰めたような味なんだもの。本物のお茶が飲みたい。濃くて、甘いやつ。自分がまだ生きてるって思い出させてくれるような」

「大通りに屋台があったわ」その提案は、歓迎すべき逃避に思えた。「タクシーから見えたの」

「完璧ね」彼女は振り返り、近くで相変わらず冷戦を繰り広げている夫と弟に視線をやった。「あなたたち」彼女の声は、その瞳の色よりもずっと明るかった。「冒険に行くわよ。お茶を飲みに」

忠実な番犬であるオレグは、すぐに頷いて彼女の隣に並んだ。けれどミハイルは、私たちが歩き出しても、少し離れた後ろを、青白い影のようについてくる。彼は私たちよりも、木の上にいるマラバルオオリスを仲間と感じているようだった。ナタリアが語った不仲の話も、こうして目の当たりにすると、それは不快なほどに実体のある、物理的な隔たりとして感じられた。

アシュラムの装飾的な門を抜けると、手入れの行き届いた芝生と、強制された静けさが後ろに遠ざかっていく。大通りは、その対極にあった。混沌とした生命と騒音の川。ジャスミンの香りがした空気は、ディーゼルの排気ガスと、通り過ぎるバスが巻き上げる埃の匂いに変わった。男たちの視線。鳴り響くクラクション。それは乱雑で、うるさくて、そして本物だった。

オレグが、道端の小さな建物を指差した。「屋台」と呼ぶには、あまりに粗末だった。それは庭の物置ほどの大きさしかない土壁の小屋で、ヤシの葉で葺いた屋根は、強い風が吹けば飛んでいってしまいそうに見える。色褪せたピンクのサリーを着た女性が、黒く煤けた三つの石の間に組まれた火を、うちわで扇いでいた。煙突のない煙は、炭と燃える木の匂いをさせながら、入り口からもうもうと立ち上っている。

「お茶を四つ、お願いします」私たちが近づくと、ナタリアが言った。

女性が顔を上げた。四十歳くらいだろうか。痩せてしなやかで、高い頬骨と、理知的な黒い瞳が、一瞥しただけで私たち全員を値踏みした。その貧しい身なりとは不釣り合いな、静かな尊厳が彼女にはあった。

「はい、どうぞ」驚くほど明瞭な英語だった。彼女は小屋から、蒸気の立つ乳白色の紅茶が入った四つの鋼のタンブラーを、小さな盆に乗せて持ってきた。私たちは道端のコンクリートの側溝に腰掛けた。オレグはナタリアの隣に、どっしりと、安心感を与えるように座る。ようやく追いついたミハイルは、数フィート離れた木に寄りかかり、自分だけの孤独の島を作っていた。

一口飲む。そのお茶は、神々の飲み物のようだった。火傷しそうなほど熱く、強烈に甘く、そして生姜のぴりっとした温かみが染み渡る。ここ数日で口にしたものの中で、最も生命力に満ちた味だった。

「とても美味しいです」私は、正直な気持ちを女性に伝えた。

彼女の顔に、誇りの色がさっと浮かんだ。「お気に召して、嬉しいです」その声は、柔らかく芳醇だった。

私たちはしばらく、心地よい沈黙の中でお茶を飲んだ。車の騒音が、私たちの小さな集まりの静かな親密さと、奇妙な対旋律を奏でる。

「アシュラムの方ですか?」女性が、当たり障りのない視線で尋ねた。

「ええ」ナタリアが快活に答えた。「導師グルの教えを楽しんでいます」

その変化は、瞬時にして、衝撃的だった。女性の顔は硬直し、目元の柔らかな線は引きつって、侮蔑の仮面のようになった。その優雅さは消え、脆く、鋭い何かに取って代わられた。彼女はそっぽを向き、何かをぶつぶつと呟いた。私の知らない言葉の、耳障りで、喉の奥から絞り出すような響き。けれど、呪いのように吐き出された一つの単語は、万国共通だった。

――あの、クソ野郎。

私の探偵としてのアンテナが、ぴんと立った。少し間を置いてから、私は声をかけた。あくまで、穏やかな声で。「スワミ・サダナンダ師がお気に召さないようですね」

女性の頭が、私の方へと勢いよく振り向いた。その黒い瞳が燃えている。「お気に召さない、ですって?」彼女は唾を吐きかけるように言った。その言葉自体が侮辱だった。「あの男は『スワミ』なんかじゃない。あいつの名前はシャンカルよ。そして、馬鹿どもの目をくらませた、いかさま師だ」彼女はナタリアを一瞥した。その表情には、哀れみと軽蔑が混じっていた。「お気の毒に、奥さん。あんたは、自分の国からはるばる、ヤブ医者に診てもらうために来たんだよ」

「彼を、どうして知っているんですか?」私は、彼女の剥き出しの怒りをなだめるように、静かな声で尋ねた。

「知っていて当然さ。私は、あいつの従姉妹なんだから」その言葉は、割れたガラスのように鋭かった。「私の名前はマードゥリ。あいつと同じ町の出身だよ。シヴァカシ。爆竹と埃の町さ。あいつは運良くそこから逃げ出せた。私は、違ったけどね」突然、熱い怒りの涙が、彼女の目に滲んだ。「あいつは神様みたいに成り上がって、私は未だにここで、木の枝を燃やして茶を沸かしてる」

ナタリアは呆然とし、その手は唇まで運ばれる途中で凍りついていた。オレグが、彼女の腕を支えるように手を置く。ミハイルでさえ、いつもの上の空といった様子はなく、マードゥリの声に込められた生々しい感情に、意識を奪われているようだった。

「なぜ、彼がいかさま師だと?」私は畳みかけた。心臓が、早鐘を打ち始める。これはただの地元の噂話ではない。これは、傷だ。

「理由だって?」マードゥリは、耳障りで、醜い声で笑った。「シャンカルは酔っぱらいで、ヒモだった。毎年クーヴァガムで、自分が本当に何をしたいのか認める勇気もないくせに、アラヴァニたちと寝ていたわ」彼女は言葉を切り、嗚咽を漏らした。「あの子たちが妊娠できなかったのは、幸いだった」

その、あまりに政治的に正しくなく、無神経な言葉が宙に浮いた。けれど私にはわかった。その言葉の背後にある痛みは、古く、個人的なものだ。

「なぜ、それが幸いだったんですか、マードゥリ?」私は、そっと尋ねた。

彼女は私を見た。その顔は、悲劇の仮面のようだった。「なぜなら」彼女は囁いた。怒りは消え去り、広大で、空虚な悲しみが現れていた。「シャンカルは、私の妹を妊娠させたから。妹は、十七だった。お腹が目立ち始めた時、あいつはここ、バンガロールに逃げた。私は追いかけて、妹と結婚してくれと頼んだ。あいつは断ったよ。自分は神聖な、禁欲の人生を送るんだとさ」彼女は、再び嗚咽をこらえた。「両親に、話すしかなかった。両親は、妹に話した。妹は、その恥に耐えられなかった。海に、歩いて入っていったのよ」

その物語は、石のように私の胃の腑に落ちた。交通の騒音も、埃も、熱気も、すべてが遠のいていく。ただ、この女性の顔に浮かんだ、生々しく、耐え難い悲しみだけがあった。

「お悔やみ、申し上げます」その言葉が、いかにちっぽけで無力に響くことか。

マードゥリは手の甲で目を拭った。彼女は落ち着きを取り戻したが、それは氷でできた落ち着きだった。その声には、以前よりも冷たく、命取りな敵意が戻っていた。

「私はシヴァカシには帰らなかった」彼女は、遠くに見えるアシュラムの門を凝視しながら言った。「ここに残った。あいつを見るために。あの悪党が、聖人になっていくのを見るために。でも人間は変わらない、中身はね。あいつは今でもシャンカルだ。そして私は、まだ待っている」

彼女は身を乗り出し、声を潜めた。その復讐の約束は、あまりに静かで、あまりに絶対的で、どんな叫び声よりも恐ろしかった。

「いつか、あいつはしくじる。その時が来たら、私がやる。チャンスは逃さない。ネズミを殺すみたいに、容赦なく、斧で叩き殺してやるわ」

第六章 聖者は殺された

ナタリアが去った朝は、空気が酸っぱかった。彼女の別れの言葉は慌ただしく、抱きしめられた感触は、親愛というより、必死に何かにすがりつくような、脆いものだった。私たちの間には、言葉にならないたくさんの感情が宙吊りになっていたけれど、タクシーのエンジンは無遠慮に唸りを上げ、待ってはくれなかった。埃っぽい窓の向こうから私を見つめる彼女の顔は、青白い悲劇の仮面のようだった。この奇妙な場所で唯一の同盟者を失い、胸騒ぎが冷たい結び目となって胃のあたりに居座った。

その日、残りの時間は、強制された瞑想と味気ない健康食の、ぼんやりとした霞の中を漂うように過ぎていった。ナタリアの不在によって、私がここにいる目的そのものが溶け出してしまったように感じ、ただ途方に暮れていた。

その夜、最後の説法のために、私たちは瞑想ホールに召集された。スワミ・サダナンダは壇上で、完璧な、そして腹立たしいほどに穏やかな姿で座っていた。部屋を見渡す彼の瞳が、やがて私を捉えた。

その視線は、長く、まとわりついた。初日に向けられた、あの値踏みするような眼差し。けれど今は、そこに別の何かが混じっている。怒りでも無関心でもなく、一種の物悲しい後悔。まるで、指の間から滑り落ちてしまった貴重な工芸品を、収集家が眺めるような目つきだった。彼の視線が私の身体の上をなぞる時、ほとんど聞こえないほどの微かな溜息が漏れた――それは深く、ほとんど哲学的な失望の響きを持っていた。そして彼は視線を外し、他の信者たちへと移した。その一瞬は過ぎ去ったが、私の肌には、べっとりとした油膜のような不快感が残った。

十時半には、小さな物事に幸せを見出すという説法は終わった。ぞろぞろと退出する中、導師グルが、男子寮の隣にある、天井が高く調度品の整った自室へと、ゆったりと歩いていくのが見えた。中へ消える前、彼は信奉者に向かって呼びかけた。

「シヴァ、急いでくれ!」その声は、柔らかく、人を誘うような命令だった。「いつもの『ナイトキャップ』がないと、眠れないんだよ」

「ただいま、猊下!」シヴァが叫び返し、すでに厨房へと急いでいた。

私は自分の寮室に戻った。ナタリアが使っていた空の寝台が、私の孤独を際立たせる。自分のベッドに横になると、その日一日の、憂鬱と不安が入り混じった奇妙な感情が、骨の髄まで染み込んでくるようだった。気づかないうちに、私は眠りに落ちていた。

鳥のさえずりで目が覚めた。新しい一日の訪れを約束する、涼やかで新鮮な空気。一瞬、世界は完璧に思えた。私は素早くシャワーを浴び、ジーンズとシンプルなトップスに着替える。頭の中は、今日こそは上級者向けのヨガのポーズを習いたい、という考えでいっぱいだった。長い廊下へと足を踏み出すと、朝の静寂に、私の足音だけが響いた。

ヨガホールに向かっていた時、喉の渇きを覚えた。メインの浄水器は、反対方向にある男子寮の近くだ。私は踵を返した。浄水器にたどり着くかどうかの、その時だった。導師グルの部屋の扉が、壁に叩きつけられるほどの勢いで、激しく開いた。

アショクが、何かに取り憑かれたように転がり出てきた。いつもは整っている髪はめちゃくちゃに乱れ、白い衣の襟は引き裂かれ、その両手は自らの顔を引っ掻き、赤いみみず腫れを作っていた。

「ああ、神よ、終わりが来た!」彼は、この世のものとは思えない、生々しい叫び声を上げた。「目の光が、奪われた!」

その声に宿る、純粋な、動物的な恐怖に、私は凍りついた。彼は自分の頭を拳で殴り始め、その身体は、あまりに絶対的な悲しみに打ち震え、見る者を恐怖に陥れた。

「アショク?」私は、彼に向かって一歩踏み出した。「どうしたの?何があったの?」

彼は私を見たが、その目は血走り、虚ろで、陽の光が差し込む廊下のはるか彼方にある何かを見ているようだった。「身体から、息が奪われた!」彼は嗚咽した。その言葉は、支離滅裂で理解不能な、絶望の祈りだった。「これは、すべての存在の終わりだ!」

彼はヒステリーに陥っていた。純粋な本能に突き動かされ、私は手を伸ばし、彼の頬を平手で強く打った。その音は、朝の静寂の中に、鋭く、醜い亀裂を入れた。

アショクはよろめき、片手で顔を押さえた。その狂乱の瞳に、ようやく認識の光が宿った。「ブラウンさん!」彼は喘いだ。

「ええ」私の声は、微かに震えていた。「何があったのか、教えて」

導師グルが」彼は泣き叫び、その声は途切れた。「導師グルに、何か恐ろしいことが!」

「病気なの?」心臓が、肋骨を激しく打ち始める。

アショクは首を横に振った。一筋の涙が、頬の埃を伝って流れた。「殺されたんです」

その言葉は、猥褻で、ありえない響きを持って、宙に浮いた。信じられない、という一瞬の後、世界が止まった。そして、次の言葉を待たずに、私は彼を押し退け、導師グルの部屋へと踏み込んだ。

部屋は、贅沢なオアシスだった。高い天井には神々や英雄の絵が描かれ、彫刻が施された巨大なマホガニーのベッドの上には、シルクのカーテンが窓を飾っている。大きなテレビは、黒く、沈黙していた。ベッドの隣にある小さな黒檀のテーブルには、手つかずの果物の鉢と、底にミルクの澱が残った背の高い青銅のタンブラーが置かれていた。

それは豪奢な平和の光景だったが、侵害されていた。私の目は、床に引きつけられた。

スワミ・サダナンダが、真っ白な大理石の上に、不自然な角度で手足を捻じ曲げ、倒れていた。サフラン色の衣は、どす黒く広がる染みに濡れている。彼は残忍な力で殴打され、その頭部は、血と骨の瓦礫と化していた。だが、私の胃をせり上がらせたのは、彼の顔だった。それは、完全に破壊されていた。アーモンド形の瞳があった場所には、ただの空洞が穿たれ、その残虐さは、理解を超えた憎悪を物語っていた。壁と床に飛び散った血痕は、純粋な殺戮のジャクソン・ポロックのようだった。

殺人には慣れていたが、こんなものは見たことがなかった。吐き気の波が、喉の奥から込み上げてくる。私はよろめきながら廊下に戻り、身をかがめ、むき出しの土くれの上に、激しく嘔吐した。

浄水器の水で顔を洗い、無理やり呼吸を整える。世界が回転を止めた時、私は再び中へ入った。恐怖は薄れていなかったが、私の探偵としての精神が、混沌の中で、冷たいエンジンがかかるように、動き始めていた。

アショクの叫び声が、ようやく他の人々を引き寄せた。シヴァ、ミハイル、ディワカル・シェティ、そしてオレグが、戸口に集まっていた。彼らの顔は、信じられないという思いと恐怖が混じった、同じ仮面のようだった。彼らは床の死体と私を交互に見て、その目は大きく見開かれ、何かを問いかけていた。まるで、先生を探す、迷子の子供たちのように。

聖者は殺され、至福の住処は、屠殺場と化した。


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