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美しい檻

原作:The Unicorn's Garden

by Yulia Yu. Sakurazawa

第一章 霧雨に揺れるシンボル

じっとりと湿ったアラバマの夜が、窓ガラスを呼気で曇らせていた。天気というよりは、まるで気分そのものみたいな、重たくまとわりつく空気。望むと望まざるとにかかわらず、心の奥底の秘密を絞り出してくるような、そんな夜だった。

僕は眠りと、部屋のぬるい熱気との間で身動きが取れずにいた。シーツはいつの間にか湿ったロープのように足に絡みつき、もがいていた。そして、またあれが現れた。

悪夢ではなかった。悪夢には牙や爪があり、追いかけてくるものだ。けれど、あれは手招きをしていた。

まぶたの裏の、深く神秘的な闇の中で、何かがきらめき始める。真珠のように完璧な、淡いピンク色の円。そのすぐ下に、正三角形の十字が伸びている。信仰の十字架ではなく、均衡を保つための十字。恐ろしくはない。むしろ穏やかで、その静けさこそが何より不気味だった。それは僕のものではない、柔らかく執拗な心臓の鼓動のように脈打ち、そして踊り始めた。僕の眠りという空っぽの劇場で、優雅に、音もなくくるくると回り続ける。

まぶたが震えた。明晰夢特有の、いまいましいほどはっきりとした意識で、自分がどこにいて何が起きているのかはわかっていた。だが、それを止める術はない。このシンボル、この柔らかく女性的な紋章は、もう一年近くも続く招かれざる客だった。それは執拗で、有無を言わさぬ吸血鬼のようで、僕はもうほとほと疲れ果てていた。

うめき声をあげ、僕は朝の表層へと必死に泳ぎ着いた。重い目を開けると、見慣れた男所帯の散らかった部屋が広がっていた。古いピザとアックスボディスプレーの匂いが混じった空気。週末の残骸であるビールの空き瓶が、コーヒーテーブルの上で墓標のように並んでいる。ルームメイトのベン・ハヤシとトニー・ゴンザレスはもう起きていて、朝のサッカーの練習のためにスパイクとジャージを身につけていた。

しまった。またあの夢のせいで遅刻だ。

「よう、ボス。やっとお目覚めか」トニーが壁のペンキすら魅了して剥がしてしまいそうな笑顔を見せた。彼は精悍でハンサムな、エネルギーの塊みたいな男だ。きれいな練習着を放ってよこす。僕はそれを片手で受け取った。見慣れたその動きに、少しだけ心が安らいだ。

「ハイタッチが先だろ」僕は眠気でかすれた声でつぶやいた。僕たちは手を打ち合わせた。乾いたその音は、僕たちの朝の儀式であり、暗黙の掟だった。

早くから日に焼けた実直な顔をしたベンが、針のようにまっすぐな髪にジェルをつけて立てながら言った。「大丈夫か?またうなされてたぞ」

「ただの夢だよ」僕はそう言って肩をすくめた。「先に行っててくれ。それとハヤシ、シュートは高く上げるなよ。低く、地面を意識しろ」

「アイ、アイ、キャプテン」彼は真面目な顔で敬礼の真似をした。

二人が出ていこうと振り返る。パティオの網戸が、もうぶんぶんと飛び始めた今日の最初のハエの音を立てていた。そのドアの前で、トニーが立ち止まって振り返った。彼の笑顔は消えていた。

「また、あの夢か?」

僕のため息は、重たい空気に吸い込まれて消えた。僕は一度だけ、疲れたように頷いた。二人は僕に繰り返し見る夢があることを知っていた。僕を冷や汗まみれにし、夜明けを呪わせる夢だ。だが、その夢の具体的な中身は話していなかった。ピンクの真珠と十字架の話を、うなり声とゴールポストで会話するような奴らにどう説明すればいい?それは仲間内の掟を裏切るような、自分の中の何か柔らかく奇妙なものを認めてしまうような気がした。幸い、二人はそれ以上突っ込んではこなかった。そういう意味では、いい友達だった。

ノースリーブの白いシャツとストライプのボクサーパンツを脱ぎ捨ててバスルームに向かう途中、湯気で曇った鏡に自分の姿が映った。身長は175センチほど。アラバマで一番背が高いわけではないが、がっしりしている。衝撃に耐えるために作られた身体。理想的な逆三角形の上半身に、筋張った腕、サッカー選手の脚。男の構造だ。砂色の髪はぐしゃぐしゃで、目は穏やかだが疲れきった灰色をしていた。いつもは不敵な笑みを浮かべているはずの、少し歪んだ口元。これが僕。レオン・トーマス。ゴールを決め、酒を愛し、たくましい男仲間との時間を謳歌する男。自分が何者であるかを、ちゃんとわかっている男。

それなのに……鏡に映る自分の姿の背後に、自分の胸の上に重なるように、あれが見えた。

あの、柔らかいピンク色の円が。

突然、鋭い嫌悪感が身体を突き抜けた。幼馴染のエミリーが、眠っている僕に悪戯で真紅のマニキュアを塗った時のことを思い出した。血に飢えた猟犬のように吠えて目覚めた。自分の身体にまとわりつく、あの艶やかな女性性というものが、深い冒涜のように感じられたのだ。除光液で、最後の一片までこすり落とさずにはいられなかった。アセトンの匂いは、浄化の儀式だった。まとわりつく最後の名残を、僕から拭い去る必要があった。

僕は冷たい水を顔に叩きつけた。肌がひりつくまで、何度も。幻は消えた。鏡の中にはまた、がっしりとした、現実のレオンがいただけだった。世の中には二つの性別、男と女がいて、僕は間違いなく、ありがたいことに、その片方だった。もう片方は、賞賛し、追い求め、手に入れるためのものであって、自分自身のアイデンティティに触れさせるものでは断じてない。

カーキ色のズボン、ネイビーのトップス、そしてスニーカーという「鎧」を身につけ、僕は湿った朝の中へと向かった。僕は物理学を学ぶ男、物質とその時空における運動を研究する男だ。僕が信じるのは、測定できるもの、検証できるものだけ。客観的な観察によって証明されたものだけだ。

あれはただの夢。意味のない、潜在意識のノイズ。

そうに決まっていた。

第二章 科学の徒

物理学研究室は、僕の聖域だった。そこは、宇宙がきちんと法則に従ってくれる場所だった。じっとりとした主観的な霧雨はなく、測定可能なパーセンテージで示される湿度があるだけ。神秘的な闇はなく、光子の不在があるだけだ。高電圧装置から放たれる微かなオゾンの匂いが、清潔で無機質な空気を満たしていた。それは曖昧さのかけらもない、肺を洗い清めてくれるような匂い。真実の匂いだった。

エミリー・マリンはもう来ていた。オシロスコープの緑色の光を背に、彼女のシルエットが浮かび上がる。金の紡ぎ糸のようなブロンドの髪が、無造作だが手際よく一つにまとめられている。彼女は回路基板の上にかがみ込み、時計職人のような繊細さで抵抗器を微調整していた。僕たちは一年生からのラボパートナーで、幼稚園からの友達だった。僕たちの絆は、擦りむいた膝、分け合ったジュース、そして小学校三年のデイヴィソン先生の算数の恐怖の共通の思い出などの上に築かれている。僕は彼女を愛していたが、それは自分の左腕に恋愛感情を抱こうとするのと同じくらい奇妙なことで、姉に対して抱くような、清潔で混じり気のない愛情だった。去年、彼女が付き合ってみないかと提案してきた時も、正直にそう伝えた。幸い、彼女はその正直さを評価してくれ、気まずさはすぐに消え、友情はむしろ強固になった。

僕がバックパックを置くと、彼女は顔を上げた。その海緑色の瞳が、僕の顔のやつれたラインをすぐに見抜いた。彼女は知っていた。

「当ててあげようか」彼女はワイヤーストリッパーを置きながら言った。「またあの夢に起こされたんでしょ」

僕は感じていない無関心さを装って肩をすくめ、髪を手でかき上げた。「もう飽きたよ。僕の潜在意識も、新しいネタを考えるべきだな」

「レオン、まるで幽霊と取っ組み合いでもして負けたみたいな顔よ」彼女は実験台に寄りかかり、腕を組んだ。「もう一年も続いてる。誰かに…そうね、相談してみたら?」

「相談してるじゃないか。君に」

「そういう意味じゃないのはわかってるでしょ。専門家に。セラピストとか」

その言葉は、研究室の無菌の空気の中に、汚染物質のように落ちた。僕は苛立った。「セラピスト?夢ごときで?エミリー、僕は物質とその時空における運動を研究する人間だぞ。客観的な観察と反復実験で検証できる理論しか信じない。セラピストが何をしてくれるって言うんだ?僕のイドをスライドガラスに乗せて、顕微鏡で調べてくれるのか?」

自分の声が、自己防衛的で、刺々しく響いた。計算にケチをつけられた時と同じ口調だった。エミリーはひるまなかった。

「科学はレーザー光線の干渉縞を説明できるわ、レオン」彼女の声は柔らかいが、断固としていた。僕たちが組み立てている、鏡とダイオードの美しく複雑な装置を指差した。「でも、あなたのその取り憑かれたような顔を説明できる?これはデータの問題じゃない。あなた自身の問題よ」

彼女の言葉は神経に触った。僕は背を向け、電源装置をいじり始めた。指の関節が白くなる。彼女の言う通りだった。そして、それがいっそう僕を苛立たせた。あの夢は物理学の問題じゃない。それは、科学という整然とした格子の網の目を、煙のようにすり抜けていく何かだった。

僕の脳裏に、子供の頃の記憶が不意によぎった。あの真紅のマニキュアの亡霊。あの朝、僕はただ怒っていただけではなかった。侵害されたのだ。自分の身体に塗られたあの艶やかな赤は、まるで肌に走り書きされた異国の文字、理解を拒絶する言語のように感じられた。僕が爪先を血が滲むほどこすったのは、ただ色を落とすためだけではない。その感情を祓うためだった。僕に押し付けられた女性性の染みを、洗い流すためだった。

そして今、あの夢と共に同じ感情が蘇る。あのピンク色の円は侵入者だ。僕の精神という、ごつごつした風景の中に現れた、柔らかく、望まれない感触。それは、僕が自分自身を定義するために、その対極に置いてきたすべてのものの象徴だった。

「ただのストレスだよ」僕はエミリーの方を振り返り、今度はもっと落ち着いた声で言った。合理性という砦を、言葉のレンガで一つ一つ積み上げていく。「睡眠不足とカフェインの摂りすぎだ。脳は生物学的な機械なんだ。時々、バグを起こす。ノイズやアーティファクトを生成する。それだけのことさ。コードに生じた、しつこいアーティファクトだよ」

「あなたの生命力を吸い取ってるアーティファクトね」彼女は反論した。ケーブルを一本手に取り、僕に渡す。その表情は共感に満ちていて、僕はそれが嫌だった。共感とは、解決できない問題に向けられるものだ。そして僕は、すべての問題には解決策があると信じていた。正しい公式を見つけさえすればいいのだと。

「寝れば治る」僕はケーブルを受け取りながら言った。僕たちの手が触れ合う。慣れ親しんだ、友情の感触だ。「とにかく、このレーザーの調整をしよう。何か現実的なものに集中する必要がある」

それから一時間、僕たちは作業に没頭した。波長と振幅、屈折と干渉性という、クリーンな言語で会話した。僕が鏡をミリ単位で調整すると、完璧で揺るぎない真紅の光線が部屋を横切り、壁の向こうのターゲットの中心を射抜いた。直線。予測可能な軌道。それは美しかった。

その純粋な光の筋を見つめている間、一瞬、安らぎを感じた。これこそが僕の理解できる世界だ。原因と結果の世界、書き留めて証明できる法則の世界。ささやき声も、シンボルも、そして理性の縁の向こうで僕を待つ、あの柔らかく執拗に渦巻くピンクの円もない世界。

だが、結果をノートに記録している時、僕の手は止まった。白紙のページに、紙の格子模様ではなく、夢で見たあの形が、透かしのように淡く見えた。

シンボル。十字架。

壁のレーザー光線は、ただの細い赤い線だった。だが、僕を悩ませる真紅は、もっとずっと深い色合いをしていた。そしてそれは、研究室の僕の外にあるのではなく、僕の中にあった。僕には、それを説明して消し去るための公式など、何一つなかった。

第三章 砂時計とユニコーン

平穏な昼間の終わりを告げるように、夜は落ち着かなく訪れた。アラバマのじっとりとした空気、窓の外のマグノリアが吐き出す湿った息に誘われ、僕は熱に浮かされたような眠りに落ちた。予測可能な物理学の世界は溶け去り、代わって僕の潜在意識の論理が支配を始めた。

僕は森の中にいた。葉が生い茂り、まるで緑色の海のようだ。木々の隙間から差し込むまばらな太陽光が、苔むした地面にまだらな光と影の模様を揺らめかせている。湿った土と、何か古く、野性的なものの匂いが空気に満ちていた。そして、ユーカリの木の下、その幹に心地よさそうに寄りかかるように、あのシンボルがあった。忘れがたいピンク色の円、その下に伸びる正三角形の十字架。それは石のように辛抱強く、僕を待っていた。

だが今回、それは踊らなかった。僕が夢の網にかかって寝返りを打つと、執拗なシンボルは形を変え始めた。ピンクの円は縦に伸び、十字架は溶けて繊細な台座になった。それは優美な砂時計へと姿を変えた。ガラスはあまりに透明で、黄金色に輝く砂粒が、上部の部屋から下部へとこぼれ落ちていくのが一粒一粒見える。夢の中だけで起こる、思考を完全に飛び越えた不合理な確信をもって、僕は自分がその砂時計なのだと悟った。僕の存在そのものが、その脆いガラスであり、僕の人生は、現在という狭い通路を容赦なく滑り落ちていく砂なのだと。

その時だった。一頭のユニコーンが、ふわりと浮かぶ雲のように白く可憐な姿で、空き地へと足を踏み入れた。その毛皮は内側から光を放つようにきらめき、額からは一本の、優雅に渦を巻いた角が生えている。森の床の一枚の葉すら揺らさぬ、静かな優雅さでそれは動いた。それは僕――砂時計――の方へやって来た。そして、僕のガラスの身体が痛みを感じるほどの優しさで、その渦巻く角を僕の側面にそっと、官能的にこすりつけた。その魔法が僕に触れた瞬間、純粋で混じり気のない愛の流れが僕を貫いた。それは僕がこれまで知ったどんな愛よりも情熱的で深く、崇拝に近い献身だった。比類なき確信をもって、僕は悟った。この生き物は僕の半身、僕の魂の失われた片割れなのだと。

突然、葉がざわめいた。鋭く不協和な気配が、空き地の静寂を切り裂いた。姿は見えない。だが、僕は彼を感じた。夏の日の悪寒のように、彼の意図を感じた。彼は侵入者、抑えきれない怒りと、空気を毒するほど苦い嫉妬に満ちた何者かだった。

僕が反応するより早く――僕のガラスの身体が警告に震えることすら許されず――襲撃者は弓を番えた。「ドゥン」という、鈍く、決定的な音が響く。矢は放たれ、まだらな光の中を黒い一筋となって、僕の愛する者をまっすぐに目指した。

矢は、ユニコーンの心臓を貫いた。

彼女は、驚きに満ちた、柔らかな吐息を漏らした。光り輝く白い身体が震える。その下の脚は、まるでゼリー状の塊になったかのように、もはやその優雅な体を支えることができなくなった。彼女は倒れた。信じがたいほど鮮やかな赤い血が傷口からほとばしり、彼女の白い毛皮と下の緑の苔を染め上げていくのを見て、僕は言いようのない悲しみに襲われた。それはあまりに巨大な悲しみで、音もなく、僕の夢の世界の土台を砕く、静かな叫びだった。

ゆっくりと、不可解に、僕――砂時計――は液体状の、流転する塊へと変わり始めた。悲しみは溶剤だった。僕という存在の脆い構造を溶かしていく。ガラスは溶け、僕の人生の黄金の砂はこぼれ落ちて、森の床でユニコーンの血と混ざり合った。そして、僕は無に帰した。

この夢は、僕に深刻な、破壊的な影響を及ぼした。前の夢が鈍い、しつこい頭痛のように僕を苛んだのに対し、これは僕の機能を麻痺させた。研究室でも、講義でも、サッカーでも、集中することができなくなった。夢の記憶は、ただの記憶ではなかった。それは僕の覚醒時の意識にも取り憑いた。鮮やかなフラッシュバックとして、繰り返し割り込んできた。

授業中に座っていると、突然、あの砂時計のありえない曲線美を自分の身体として感じた。肌はユニコーンの角の幻の愛撫に疼き、心はその形而上学的な、ロマンチックな愛で満たされた。そして、恐怖がやってくる。隠れた狩人の存在を感じ、愛する者を守らなければという思いで僕の感覚は絶叫した。死の毒矢が僕の心の目をかすめ、彼女が倒れるのを、何度も何度も見た。僕の愛する者の心臓。僕の最愛の者の心臓!僕の女神の心臓!

ああ、その悲しみは、その苦悶はあまりにひどく、僕は自分が何をしている最中であろうと、どこにいようと――バス停で、教室で、物理学研究室で、自分のアパートで――ぼろぼろと涙を流す惨めな有様となった。

その無理は、見た目にも表れた。175ポンドの筋肉と自信の塊だった僕は、著しく体重を落とした。以前はぴったりだった服が、痩せこけた身体の上でだぶだぶにぶら下がっている。栄養不足と睡眠不足で顔はやつれ、目の下には暗い、痣のような隈ができた。いつもはきちんとしていた服装もやめ、着古したスラックスと、もっと良い時代を知っているであろうTシャツでうなだれるようになった。普段は整えていた髪は、竜巻が通り過ぎたかのようだった。

人々が気づき始めた。信じられないという視線、ひそひそ話が聞こえてくる。大学サッカーチームのチャンピオンが、女々しい振る舞いをしている、と。忠実で理解ある友人であるエミリーは、僕に話しかけようとしたが、僕は彼女を避けた。意地悪をしたいわけではなかった。僕たちの間には、言葉では乗り越えられないほど巨大な悲しみの障害物があったのだ。ゴンザレスとハヤシも、いつもの威勢の良さを潜め、心からの心配を浮かべて話しかけてきたが、僕は彼らにも心を開かなかった。心配した彼らは僕の両親に電話をしようとしたが、いつものように、応答はなかった。母と父はいつも無頓着で、感情的に距離のある親であり、離婚はその溝をさらに広げただけだった。

僕は独りだった。夢の余波の中で、溺れていた。

そして、ある火曜日の朝、ユニコーンが千回死ぬのを見続けた夜の後、何かが変わった。それは決断ではなかった。思考でもなかった。それは衝動、僕がこれまで存在すら知らなかった内なる力からの、磁力のような引力だった。それは、自分が見ることすらできない手に手を伸ばす、溺れる男の最後の、必死の本能だった。

僕の中の何かの力、砂時計の砕け散った何かの残骸が、僕を古いオンボロ車へと向かわせた。誰かに告げる時間はなかった。その気も起きなかった。フロントガラスの朝霜を拭うと、自分の顔が映っていた。青白く、取り憑かれたような、僕の顔をした見知らぬ男。エンジンをかけ、意識的な目的地もないまま、僕はメイ・ブロッサム・レーンへと車を走らせ始めた。

第四章 メイ・ブロッサム・レーン

僕の中の何かの力、砂時計の砕け散った何かの残骸が、僕を古いオンボロ車へと向かわせた。僕の心が行き先を認めるのを拒否していても、僕の手は道を知っていた。向かっているのは、エミリーが以前、通りすがりに口にした、あのいかがわしい女のところだった。僕の合理的な脳がペテン師だと一蹴した、霊能者。だが今、僕の絶望はあまりに深く、懐疑心を乗り越えて、ただ虚しい渇望だけを残していた。恥ずかしかった。だが、僕にはもう選択肢がなかった。

車の外の世界は、ほとんど暴力的なほどの春に満ちていた。レンギョウの茂みからは黄色い花が噴き出し、高速道路沿いにはハナズオウのけばけばしい紫が並んでいる。美しく、何も知らないコマドリが木の枝にとまり、胸を張っていた。そのすべてが、僕を嘲笑しているように感じられた。

そして、世界が変わった。幹線道路を外れると、通りの標識には「メイ・ブロッサム・レーン」と書かれていた。空気そのものが変わり、より柔らかく、静かになった気がした。ここの家々は趣が異なり、広い通りの両脇には香り高いサルスベリや、滴る黄色い蝋のような花をつけたカッシアの木々が並ぶ、古風なコテージが建ち並んでいた。

ナオミの家は、真っ白に塗られた壁に、小さなシングル屋根のかわいらしいコテージだった。ドアと窓は深い、動脈血のような赤色で塗られている。白く塗られた回転式の門を開けると、「カチリ」という金属音が、不自然なほどの静寂の中に響いた。芝生と石でできたミニチュアの風景、魅力的な日本の枯山水が僕を迎えた。小道の両脇には、淡い桃色の杏色のドリフトローズが、ドラマチックな、血を流すような赤いロロペタルムの茂みと共に咲き誇っている。家の裏手には、優雅な白い花をつけた秋桜が、大きな守護者のように立っていた。

ドアにたどり着くと、通り過ぎる風が風鈴に触れ、旋律的で水晶のような音色を立てて揺れた。それは小さな、折りたたまれた金属の鶴でできていた。日本で長寿の象徴とされる鳥だと、記憶していた。風鈴の片側には「鬼」の面が掛かっていた。大きな丸い目と誇張された歯を持つ、様式化された悪魔。その表情は、怒りと陽気さの間のどこかで凍りついていた。それは善と悪の両方を表し、守護者であり、脅威でもあった。赤いドアの脇には、控えめな真鍮のプレートが掲げられていた。「ナオミ・イトウ、弁護士・霊能者」。

弁護士。霊能者とは無学で社会的地位の低い人々だという、僕が丹念に築き上げた偏見が崩れ去った。弁護士になるには、ナオミは有能で、資格があり、そして鋭敏でなければならない。僕の懐疑的な心は、不本意ながらも考えを改めざるを得なかった。

ドアベルを鳴らすと、僕の心臓がどきどきと鳴り始めた。恐怖からではなく、奇妙な、甘美な期待からだった。

ドアが開いた。そして僕は、人生で見た中で最も愛らしいと断言できる少女と対面した。彼女は小柄で、身長は150センチそこそこだろうか、華奢でありながら丸みを帯びた体をしていた。その顔は最高に愛らしく、繊細な小さなパーツと可憐な口元を持つ、完璧なハート形だった。彼女は淡い青地に白い桜の模様が入った、薄手の綿の浴衣を着ていた。片方の華奢な手には、折りたたみ式の扇子を持っている。長く滑らかな黒髪はシニヨンに結われ、二本の青緑色の簪で留められていた。彼女は別の時代、別の世界から来た幻のようだった。「霊能者」という言葉は、厚化粧をした、いかめしい年配の女性を思い起こさせていた。ナオミの愛らしく、穏やかな若さは、武装を解かせるような驚きだった。

その驚きが僕の顔に出ていたのだろう。彼女の顔は、最も魅惑的な笑顔にほころび、整った、ザクロのような歯を見せた。彼女の前に立つと、彼女から振動するエネルギー、静かな豊かさを感じた。論理を超えた形で、僕はこの女性が自然界のすべての要素――地、火、水、空――を自分の中で調和させているのだと感知した。それらは完璧な、静かな調和の中で振動していた。

彼女は子供のように、自己意識というものから完全に解き放たれていた。深く心を打つ仕草で、彼女は僕の手を取り、家の中へと導いた。彼女の温かく柔らかい手のひらが僕の手に触れた瞬間、快い電気の衝撃が僕の体を駆け巡った。これまで女性との性的な経験はそれなりにあったが、どんな計算されたキスも、ナオミの無邪気で、裏表のない触れ方ほど僕の神経を痺れさせたことはなかった。それは意図のない触れ方だった。それは雨の前の雲の集まりのように自然だった。言葉は交わされなかった。僕たちどちらも、話す必要性を感じなかった。普段、初対面の人との間の氷を砕くために被るユーモアの仮面も必要なかった。この女性の前では、僕はただ…自分自身でいられた。

彼女の部屋はこじんまりとしていて、深い血のような赤色で塗られていた。頭上のフード付き電球から放たれる柔らかな光が、その場所に居心地の良さと、謎めいたオーラを与えていた。金と豊かな緑の重厚なドレープが、ホールを他の部屋であろう場所から仕切っていた。部屋の中央には大きな黒檀のテーブルがあり、その上には水晶玉が小さな台座に載せられていた。一方の端には、おそらく彼女のための、アンティークな黒檀のスツール。反対側には、緑の刺繍が施されたクッション付きの、クライアントのためのヴィンテージなマホガニーの椅子があった。

ナオミは僕に椅子に座るよう身振りで示し、自分はスツールに腰掛けた。スツールはわずかに高く、背もたれのないデザインが彼女の姿勢を整え、彼女が僕を見下ろしているように見せた。横柄さからではなく、教師のような、穏やかな権威をもって。

「それで」彼女は、半ば暗闇の中で滑らかなベルベットのような声で始めた。「あなたを壊しかけている夢について、教えてちょうだい」

その言葉はあまりに直接的で、あまりに的確で、僕は息が詰まるのを感じた。僕はすべてを話した。ピンクの円。砂時計。ユニコーン、狩人、僕を無に溶かした悲しみ。覚醒時の幻覚、体重の減少、絶望を告白した。僕が注意深く守ってきた秘密が、僕からこぼれ落ち、僕たちの間の赤みがかった空間を満たしていった。

僕が話し終えると、部屋の沈黙は絶対的なものになった。ナオミのガゼルのような黒い瞳はあまりに共感的で、僕は彼女が僕の魂の奥深くを探り、僕が何らかの理由でブロックしていたかもしれない感情を特定し、さらには体験しているようにさえ感じた。彼女はありきたりの慰めや心理学の専門用語を口にしなかった。ただ僕を見ていた。その視線が、僕をしっかりと支えていた。

優しく、しかし所有者のような自信をもって、彼女はテーブル越しに手を伸ばし、僕の右手を彼女の手に取った。先がわずかに上を向いた瞳で、熱心に集中して、彼女はその線や隆起を研究した。彼女の柔らかい肉が僕の荒れた肌に触れた時、彼女の美しい眉間に、愛らしいしわが寄った。

彼女はついに顔を上げ、その黒い瞳が僕の瞳と絡み合った。そこには判断の色はなく、ただ深く、底なしの知恵があった。

「あなたの魂は」彼女は、赤みがかった闇の中でベルベットのようなささやき声で言った。「あなたが被っている仮面と、戦っているのね」

第五章 過去への扉

「あなたの魂は、あなたが被っている仮面と、戦っているのね」

その言葉は、シンプルで、深遠だった。僕の理性的な心を飛び越え、もっと深い、共鳴する真実のような何かに突き刺さった。何週間もの感情的な包囲攻撃によってすでに弱体化していた、僕の科学的懐疑論という砦が、崩れ始めた。

「どういう意味なんだ?」僕は、かろうじて聞き取れるほどのささやき声で尋ねた。崖っぷちに立つ男のような気分だった。落ちるのが怖いが、今いる場所に留まることの方がもっと怖い。

ナオミは直接答えなかった。代わりに、僕の手を離し、スツールの上で背筋を伸ばした。その姿勢は、穏やかな力の研究のようだった。「私たちの心は、自分を守るために壁を築くの」彼女は言った。「特に、若い頃はね。何が安全で、何が報われ、何が自分を傷つけないかを学ぶ。世界で生き残れる自分を築き上げるの。でも時々、その壁の後ろに閉じ込めた本当の自分が、ドアをノックし始める。最初は、優しいタップ。それから、叩く音に変わる。そして、家全体を壊し始めるの」

彼女は一息置き、その視線は揺るがなかった。「あなたの夢は、問題じゃないのよ、レオン。あれは、あなたの本当の自分が、ドアを壊そうとしている音なの」

「わからない」

「わかるわ」彼女は約束した。「椅子に深くもたれて。目を閉じて。私を、信じてみて」

僕の心は、千もの反論を叫んだ。これは催眠術だ。手品だ。インチキ霊能者の戯言だ。だが、心の芯まで疲れ果てた僕の身体は、知性を裏切った。僕はマホガニーの椅子の柔らかいクッションに深くもたれた。まぶたが、信じられないほど重く感じられた。僕は目を閉じた。

「呼吸して」ナオミの声が、闇の中の絹の糸のように指示した。「深く息を吸って。空気が肺を満たすのを感じて。そして、吐き出して。肩の力を抜いて…顎の力を…手の力を」

僕は従った。一呼吸ごとに、僕の抵抗のレンガがまた一つ、緩んでいった。彼女の声は柔らかかったが、その中には強力な暗示の気配、穏やかだが抗いがたい流れがあった。

「あなたを過去へ連れて行くわ、レオン」彼女は言った。「あなたの人生を遡るの。瞬間が、閃光のように見えるでしょう。それにしがみつこうとしないで。ただ、雲のように通り過ぎさせて」

そして、その通りになった。僕の全人生が、心の目の前で点滅した。勝利のゴールを決めた後の、群衆の歓喜の雄叫び。酒臭いロッカールームの仲間意識。観覧席の裏での、初めての不器用なキス。完璧な成績表を持ち帰った時の、父の目の中の誇り。男らしさを武器になるまで研ぎ澄まし、その価値を証明し、他の男たちとの絆を深めて過ごした僕の思春期が見えた。

「もっと遠くへ」ナオミが優しく促した。「世界があなたに、何者であるべきかを教える前に。子供時代の記憶を通り過ぎさせて…擦りむいた膝、おもちゃのトラック、顔に当たる太陽の感触を」

僕は時間を遡って漂った。自分自身の歴史の、受動的な観察者として。だが、ある地点に到達した時、僕の潜在意識は踏みとどまった。壁。硬く、冷たい行き止まり。純粋な恐怖の塊が、僕の胃の中で固く結ばれた。

「無理だ」僕は、まだ目を閉じたまま、喘いだ。「そこには何もない」

「いいえ、あるわ」ナオミの声は優しかったが、譲らなかった。「戻って、レオン。あなたがとても幼い子供だった頃に。もう怖がる必要はないわ。私が、あなたを守るから」

彼女の言葉は心を落ち着かせたが、僕の身体は彼女に抵抗し始めた。僕は椅子の中でもがき、呼吸は短く、パニックに陥った喘ぎに変わった。水面下に沈められ、溺れ、息を求めて喘ぐ男のようだった。パニックが僕を飲み込もうとしたその時、肩に軽やかで、安心させるような圧力を感じた。ナオミの手のひら。彼女の温かい肌の感触が、魔法のように作用した。僕の抵抗の嵐の中の、心を落ち着かせる錨のように。僕の心の中の壁が、溶け始めた。

そして、僕はそれを見た。

まるで今日起きているかのように、鮮やかにそれを見た。一人の子供。そして、衝撃的な認識の瞬間に、その子供が僕だと悟った。

僕は二歳か、三歳くらいだった。両親の寝室の戸口に立ち、魅入られていた。その部屋は女性的な聖域で、母の香水とヘアスプレーの匂いに満ちていた。父にまとわりつく、ごつごつした葉巻臭い空気とは対照的だった。母が、その砂色の髪の美しさがランプの光の中で柔らかく輝き、夜の外出のために服を着ていた。彼女が動くたびに、マスタード色のタフタのガウンがささやくように擦れるのが聞こえた。

僕の視線は、彼女から、ベッドの上に無造作に置かれたシルクのストールへと移った。エメラルドグリーンの、きらめく川のようだった。周りの女性的な空気に魅了され、僕は部屋の奥へとよちよち歩いていった。不器用な、子供らしい動きで、僕はそのストールを掴み、自分に巻きつけた。そして、その冷たく滑らかな布地が僕の小さな肩を滑り落ちた時、僕の中で何かがカチリと音を立ててはまったのを感じた。深い、正しさの感覚。これだ――この感触、この香り、この擦れる音――これが僕の世界だ。これが僕だ。僕は、自分が生まれ、従うことを強いられている、あの荒々しい世界ではなく、この繊細で美しい場所の一部なのだ。

僕はその瞬間に我を忘れ、自分本来の姿に包まれていた。その時、部屋に影が差した。

背の高い、がっしりとした父が、部屋に踏み込んできた。「レオン!一体何をしてるんだ!」彼の声は、僕の小さな身体を物理的に揺さぶる轟音だった。

僕は驚きの恐怖に目を見開き、はっと頭を上げた。

「お前は男だ、女々しいまねをするな!」彼は叫び、その大きな手が振り下ろされ、僕の小さな幼児のお尻を叩いた。その痛みは鋭かったが、衝撃はそれ以上に鋭かった。

「ウィリアム!」母が、細い声で驚いて叫んだ。「この子はまだ子供よ!」

「それでもだ!」父は、憤怒の嫌悪に満ちた顔で怒鳴った。「自然に逆らって、女々しい振る舞いをしている!」彼はその燃えるような目を僕に向けた。その瞬間、彼は僕の父ではなく、恐ろしい巨人だった。彼は身をかがめ、その顔が僕の顔から数センチのところまで近づき、その言葉を僕の驚いた耳にねじ込んだ。「聞け、レオン。お前は男だ。男らしく振る舞え。俺のような男になるんだ。そして、二度と母親のものでふざけているところを見つけたら、お前を生き埋めにしてやる」

生き埋めにしてやる。

三歳の僕にとって、その言葉は比喩ではなかった。それは約束だった。そのイメージが僕の心の中で生き生きと蘇った。熱く、飢えた炎が、僕の肌を舐める。

僕は椅子から飛び起きた。目を見開いた。身体は震え、気づかないうちに流していた涙で顔は濡れていた。赤みがかった部屋が、再び焦点を取り戻した。ナオミは僕の隣に立っていた。彼女の手はまだ僕の肩にあり、その顔は深く、悲しげな理解の仮面を被っていた。

「あなたは、お父さんの脅しを真に受けたのね」彼女は、まるでその場面を僕と一緒に目撃したかのように言った。「この出来事の後、あなたはあまりに怯えて、自分本来の自己への扉を、固く閉ざしてしまった。それを深く埋めて、そして次の二十年間、彼が期待する人間になろうと、社会が期待する人間になろうと、努めてきたのよ」

彼女の言葉の真実が、物理的な打撃の力で僕を襲った。夢。ピンクの円。ユニコーン。圧倒的で、説明のつかない悲しみ。そのすべてが、音を立ててはまった。

僕の即座の反応は、拒絶だった。追い詰められた動物の、悪質な反射行動だった。「気でも狂ったのか」僕は、声が裏返るのをこらえながら、唾を吐きかけた。「ペテン師め。あんたが俺の頭にそれを植え付けたんだ」僕は椅子から身を押し出した。足元がおぼつかない。僕はドアに向かってよろめいた。僕の唯一の本能は、逃げること、あの怯えた小さな男の子の亡霊から、逃げることだった。「ここに来るべきじゃなかった。戯言だ!全部、戯言だ!」

僕はドアノブを掴んで回そうとした。だが、逃げ出す前に、ナオミの穏やかな声が、僕を冷たくその場に釘付けにした。

「あなたの男らしさを非難しているわけではないのよ、レオン」彼女の口調は落ち着いていて、判断の色はなかった。「ただ、彼があなたに閉ざさせた扉を、あなたに見せているだけ」

彼女は一息置き、沈黙を伸ばした。そして、彼女は最後の、破壊的な真実を告げた。

「あなたの潜在意識は、ずっとそのドアをノックし続けていたのよ」

第六章 公園の残響

僕は、あの小さな白いコテージから、午後の眩しい日差しの中へと飛び出した。一時間前にはあれほど魅惑的に見えたメイ・ブロッサム・レーンが、今では鼻につく、人工的なものに感じられた。サルスベリの甘い香りが、息苦しい。僕は車のドアを叩きつけ、その音は静寂な空気の中で下品な亀裂となり、きれいなアスファルトにタイヤの悲鳴を残して走り去った。

ハンドルを握る僕の手は震えていた。戯言だ。ペテンだ。彼女が、あの記憶を植え付けたんだ。 その言葉は、必死のマントラ、彼女がいとも簡単に破壊した壁を再建しようとする、絶望的な試みだった。僕は当てもなく車を走らせた。僕の心は、怒りと混乱の渦巻く渦だった。僕はレオン・トーマスだ。サッカーをする。ビールを飲む。科学の徒だ。母親のシルクをまとった、あの小さな、怯えた子供ではない。

結局、僕は大学の近くにある、広々とした、名もない公園に行き着いた。考え事をするために来る場所だったが、今日の僕の思考は暴走していた。僕はベンチに身を投げ出し、頭を抱え、世界を元の、慣れ親しんだ形に無理やり戻そうとした。

公園は、ありふれた生活の陽気な騒音に満ちていた。犬が吠え、フリスビーが空中を舞い、子供たちが遊び場で笑っていた。それは正常さのシンフォニーであり、僕はいかだのようにそれにしがみついた。ほら見ろ? 僕は自分に言い聞かせた。これが現実だ。世界は固い。あの小さな赤い部屋の方が、夢だったんだ。

僕は無理やり人々を観察し、彼らの現実に自分を繋ぎ止めようとした。若いカップルが手をつないで歩き、その顔は輝いていた。木の下では学生のグループが、試験のために詰め込み勉強をしていた。そして、僕の視線は、ブランコの近くにいた家族に止まった。母親、父親、そして四歳にもならない小さな男の子。

男の子はエネルギーの旋風だった。その真っ赤なスニーカーは、彼が蝶を追いかけるにつれて、ぼやけた残像となった。彼は突然、追いかけるのをやめた。別の子供が草むらに落として忘れていった人形に、彼の目が釘付けになったからだ。それは大きな青い目と、黄色い毛糸の髪を持つ、素朴な人形だった。

小さな男の子は、それを拾い上げた。驚くほど優しく、腕の中にそれを抱きしめた。彼はそれをそっと揺らし始め、自分だけの、音程の外れた、幸せそうな小さな歌を口ずさんでいた。

彼の上に、影が落ちた。太い首と大学のスウェットシャツを着た、大柄な父親が、大股でやって来た。

「おい」男は言った。その声は怒ってはいないが、粗野で、矯正的なユーモアが滲んでいた。「そんなもんで何してるんだ?それは女の子用だぞ。置いとけ」

小さな男の子は見上げた。その顔は、混乱の仮面だった。彼のハミングが止まった。

「行こうぜ、チャンプ」父親は、今度は少しだけ語気を強めて促した。「ボール投げに行こう。人形遊びは、女々しい奴らにやらせとけ」彼は、かすかで、ほとんど見えないくらいの首の振りをした。軽い失望の仕草だった。

小さな男の子の顔が、くしゃりと歪んだ。下唇が震える。彼は腕の中の人形を見て、それから父親の期待に満ちた顔を見た。彼の中から喜びが消え去り、生まれたての羞恥心に取って代わられた。ゆっくりと、彼は人形を草むらに置いた。まるで、それが突然、汚いもの、間違ったものになったかのように。彼は向きを変え、小さな肩を落として、父親の後を追って広場へと向かった。

その光景は、一分も経たずに終わった。何でもないことだ。ありふれた、日常的な躾。父親が息子に、世界のルールを教えているだけだ。

だが、僕にとって、それは全てだった。

あの退行催眠の記憶が、僕を襲った。それは回想としてではなく、全身を貫く残響として。僕はただその小さな男の子を見ていたのではなかった。僕が、彼だったのだ。自分の肩に、シルクのストールの幻の重さを感じた。父の手のひらの痛み、彼の怒りの熱、火の恐ろしい約束を感じた。公園のあの小さな男の子の羞恥心は、僕自身のものとなった。古い傷跡の上に重ねられた、新しい傷として。

僕の拒絶という、注意深く築き上げた壁は、ひび割れたのではなかった。内側から、爆発した。塵と化した。僕は、明るい午後の日差しの中で、無防備に、震えながら取り残された。

あれは、本物だった。すべて、本物だったのだ。

ナオミは、記憶を植え付けたのではなかった。彼女はただ、僕が認めることすらあまりに恐ろしくて、存在しないことにしていたドアの鍵を、開けただけだった。二十年間、僕は父が要求する男として、社会が報いる男として、生きてきた。頑丈に建てられた、屈強な砦のような男として。だが、その砦の中では、小さな、優しい子供が閉じ込められ、それ以来ずっと、泣き続けていたのだ。夢は、彼の涙だった。ついに、石の壁から漏れ出した、彼の涙だった。

僕はそのベンチに、長い間座っていた。公園の陽気な音は、鈍い轟音へと変わっていった。太陽が木々の下に沈み始め、空をピンクと金の色合いに染めていた。もはやそれは、嘲笑ではなく、悲しみに満ちて見えた。僕は空っぽになり、怒りも、拒絶も、確信も、すべて失っていた。残っていたのは、僕が見捨てざるを得なかった自己への、深く、痛むような悲しみだけだった。

羞恥心はまだそこにいた。僕の腹の中で、とぐろを巻く蛇のように。だが初めて、それにもう一つ、別の感情が加わった。ナオミに対してではなく、父に対しての、怒りの火花。世界に対しての。そして、小さな男の子に人形を置かせた、目に見えないルールに対しての。

夕闇が迫る頃、僕はついに立ち上がった。身体は重く、足元はおぼつかなかった。何をすべきかはわかっていた。それを思うと、恐ろしかった。崖からの一歩だった。だが、もう一つの選択肢――自分の人生に戻り、見たものを見なかったふりをし、あの子供を永遠に闇の中に閉じ込めておくこと――は、今や考えられないことだった。

打ちひしがれ、壊れて、僕は車に戻った。キーを回すと、エンジンがうなりを上げた。今回、あの赤いドアの、小さな白いコテージへと戻る時、僕は自分がどこへ向かっているのかを、はっきりとわかっていた。懐疑論者としてでも、患者としてでもなく、戻るのだ。

助けを、求めに。


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